世界のインフレ懸念はさらに高まる恐れ

6月に入り上海のロックダウンが解除されたことなどによって価格は幾分か下落したが、4月後半の水準を上回っている。電力供給が不安定な状況が続くことによってリン工場の操業度が低下して供給が減少し、世界的に黄リンの需給が逼迫して半導体生産に支障が出る展開は否定できない。このように中国の電力供給の不安定化は基礎資材の需給を急速に引き締め、世界の供給のボトルネックを一段と深刻化させる要因だ。

夏を迎えて気温は上昇し、冷房のための電力需要が各国で増える。中国は電力需要を満たすために石炭増産を急ぎ、ロシアやASEAN地域などからの石炭輸入も増やさなければならないだろう。他方で、ドイツなどの欧州各国はロシアからの天然ガスの供給減少に直面している。再生可能エネルギーや原子力によって電力需要を満たすことは難しく、石炭火力発電の増加は不可避だ。

わが国でも夏場の電力需要を満たすために休止中の火力発電所が再稼働される。世界各国による石炭争奪戦は激化し、価格が押し上げられるだろう。世界の資源価格には上昇圧力がかかり、インフレ懸念が追加的に上昇しやすい。中国の電力不足は共産党政権の経済運営だけでなく、世界経済の足を引っ張る問題だ。

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