“豚肉大国”中国が世界中の飼料を爆買い

食糧安保を優先課題に掲げた中国が、豚肉の増産に力を入れている。2021年に中国がトウモロコシを大量に輸入したのも「養豚向けの飼料」にするためだった。グローバル化の功罪で、中国の豚が世界のトウモロコシを丸呑みすれば、日本も影響なしでは済まされない。その一方で、日本には国際情勢に左右されない小さな生産農家が点在する。“養豚の原点”を見直せば、“中国の丸呑みがもたらす負の連鎖”から抜け出せるかもしれない。

神奈川県南足柄市の「農場こぶた畑」。母豚で3~5頭、仔豚も含めて30~50頭を規模の目安に飼育している
筆者撮影
神奈川県南足柄市の「農場こぶた畑」。母豚で3~5頭、仔豚も含めて30~50頭を規模の目安に飼育している

現在、中国における豚肉は、食肉生産の7割を占める“最もポピュラーなお肉”である。その豚肉は、輸入量・生産量ともに中国が世界一だ。国家統計局によれば、2021年、中国では6億7128万頭の豚が出荷され、今では世界最大の養豚大国となった。

豚を育てるには、餌となるトウモロコシが必要だ。中国にとって輸入トウモロコシは欠かせない飼料であり、その価格が高騰すれば、養豚業界が打撃を受ける。案の定、2022年2月第4週、中国の養豚業界から悲鳴が上がった。2月24日にロシアがウクライナに侵攻すると、たちまちトウモロコシの価格が高騰したのだ。4月下旬、トウモロコシの国際価格は最高値に迫った。

世界中でトウモロコシの争奪戦に

中国は昨年、2836万トンのトウモロコシを輸入した。最大の輸入相手国は米国で、2014~19年は毎年100トン未満と低く推移したが、2020年から急増し、2021年には全輸入量の7割に相当する1983万トンを米国から調達した。第2位の輸入相手国はウクライナで、同年全輸入量の3割に相当する823万トンを輸入した。

トウモロコシ
写真=iStock.com/feellife
※写真はイメージです

中国では2018年夏、アフリカ豚熱が流行し、2019~20年の豚の出荷量と豚肉生産は大幅に減少した。2021年には流行以前の水準に回復するが、同年のトウモロコシの大量輸入(2836万トン)は、ほとんどが豚の飼料向けだった。

一方で、日本も輸入トウモロコシの6割超を米国に依存しているが、トウモロコシの全輸入量は2020年で1577万トン、2021年で1524万トン(数字は農林水産省)と減少する傾向にある。

資源・食糧問題研究所の代表で、『中国のブタが世界を動かす』(毎日新聞社)の著者でもある柴田明夫代表は、「中国が輸入を急増させているのとは対照的に、日本のトウモロコシ輸入量は減っており、価格が高騰する中で『日本の買う力』が失われているともいえます。今後、中国と競合するようになれば、争奪戦に巻き込まれる可能性さえあります」と語る。