中国軍が訓練を繰り返し「戦時下にあるよう」
本土復帰から50年を迎え、51年目に突入した沖縄。なかでも台湾や尖閣諸島に近い沖縄県与那国町(与那国島)や石垣市(石垣島)など八重山諸島の自治体では、「軍事的プレゼンスを増す中国にどう備えるか」という大きな課題を抱えている。
実際、このところ中国軍による動きが目に見えて活発化している。
2022年4月7日、中国のY9電子戦機が、与那国島から宮古島南方の太平洋上を往復した。Y9電子戦機は、機体の下部にアンテナを搭載し、電波情報の収集や妨害電波を発信することを目的とした軍用機である。与那国島の海域でこのタイプの軍用機の飛行が確認されたのは初めてのことだ。
その約1カ月後には、中国海軍の空母「遼寧」が7隻の艦艇を伴い、沖縄本島と宮古島の間を南下。艦載機の離発着訓練を100回以上も実施している。これも、台湾や尖閣諸島に侵攻することを想定した演習にほかならない。
筆者は、さっそく与那国島へと飛んだ。そこで聞いた住民の声は、島が有事の最前線であることを再認識させるものであった。
「ロシアがウクライナに侵攻してから、緊張が一段と高まった感じがします。日によっては中国軍に備えた台湾軍のドーンという砲撃訓練の音まで聞こえてきて、戦時下にあるような気がしますよ」(40代男性)
「神奈川から移住して11年。実家の親からは『ウクライナみたいになる前に戻ってこい』と言われていますが、攻撃されるときはどこにいても攻撃されると思うので、好きな島に覚悟を決めて住んでいます」(30代女性)
人口1700人の与那国島で急浮上した「台湾村」構想
与那国島は、日本の最西端に位置する島だ。人口は約1700人。台湾とは約110キロしか離れていない。天気が良い日には台湾の東岸が目視できる。ちなみに尖閣諸島とも150キロ程度の距離にあり、尖閣諸島を行政区域としている石垣市からの距離よりも近い。
つまり、与那国島は、台湾に一番近い島であり、中国が台湾や尖閣諸島に侵攻した場合は最前線となる島である。
その島で急浮上したのが、「台湾村」の建設構想だ。構想を推進するのは、在沖縄与那国郷友会という団体で、今年中にも建設準備会を発足する予定だ。