台湾企業や移住希望者を受け入れて島を活性化

5月5日に発表された「台湾村」建設の基本計画では、台湾企業や移住希望者に土地を提供することで、島の過疎化に歯止めをかけ、経済活性化にもつなげたいとしている。

そして、ゆくゆくは、与那国島と台湾を結ぶ定期航路の開設も目指し、台湾からの人口流入によって、島の人口を現在の2倍以上にしたいとしている。

筆者は、「台湾村」建設構想が想定している嘉田地区を見てきた。嘉田地区は農地や牧草地が拡がるエリアだ。与那国空港やフェリーが発着する港からも車で10分から15分程度とそう遠くない。

何より、陸上自衛隊与那国駐屯地に近いのが心強い。距離で言えば2キロから3キロあたりであろうか。

台湾侵攻から逃れた人々を受け入れる「避難施設」に

政府は2022年9月、自衛隊基地周辺や国境離島など安全保障で重要となる土地の取得や利用を制限する。与那国島の場合も、駐屯地から1キロの範囲は特別注視区域として制限の対象になる予定だ。

「台湾村」は、制限の対象地域には入っていないものの、駐屯地からは車で数分の距離に建設される方向で話が進むと見られる。今後は構想の実現に向けて、基本的な枠組みを決め、土地の所有者や町役場とも話し合いが進むことになる。

ただ、この「台湾村」建設構想にはもう1つ理由がある。与那国町漁業協同組合の組合長、嵩西茂則さんは言う。

「台湾有事に備えた避難計画ですよ。台湾が中国の攻撃を受けたとき、台湾の人たちが与那国島に疎開できるようにしておくという狙いもあるんですよ。台湾有事の際は、東に避難する場合、間違いなく与那国島に来ます。台湾の起業家はお金を持っていますから、それを活用しながら、与那国島に、ビジネスや生活拠点だけでなく避難施設の意味も込めた場所をつくろうとしているんだと思いますよ」