ロシア軍は陸続きの侵攻で兵站に失敗
振り返ってみると、兵力で勝るロシアがウクライナ侵攻で苦戦続きなのは兵站に失敗したことが大きな理由の1つである。
「水・食料や衣料が届かず、兵士の士気が低下」
「燃料や弾薬が不足し、ロシア軍部隊の前進が遅滞」
このように、ロシア軍の苦戦ぶりを伝える報道が相次いだのは記憶に新しいところである。
キーウ陥落に向け、ロシア軍があらかじめ部隊を展開させていたのはベラルーシ国境付近。ここからキーウまでの直線距離は180キロほどある。
また、2014年、強引に併合した南部のクリミア半島からマリウポリまでは400キロ近い距離がある。
このように、戦闘の最前線と後方部隊がいる地域との距離が大きく離れている場合、兵站を成功させるために、中間に補給点(物資集積所)を設けるのが通常である。
ところが、ウクライナ領土内にロシア軍の補給点はほとんど確認されず、そのため、輸送車両は長距離の往復を余儀なくされて、効率の悪化を招いた。
陸続きのロシア―ウクライナ間でこの状態である。台湾有事や尖閣諸島有事になった場合、空と海からしか物資の搬送手段がない島嶼部では、もっと労力が必要とされることになる。
中国軍が侵攻してもアメリカ軍は当てにならない
「いざとなれば、アメリカ軍が守ってくれる」
このように思う読者の方は多いと思うが、有事が生じた当初はこんな期待を持たない方がいい。
アメリカ政府は2012年、沖縄に駐留している海兵隊を、グアムやハワイ、オーストラリアに分散する方針を決めて、在日米軍再編計画の見直しに関する日米共同文書に盛り込んだ。
その理由の1つは、アメリカ軍の沖縄一極集中を緩和させるためだが、もう1つ、中国のミサイル攻撃を想定し、ダメージを最小限に食い止めるという狙いもある。
この観点から言えば、中国軍が台湾や尖閣諸島に迫った場合(迫る動きを見せた場合)、在沖縄アメリカ軍の大半は、グアムなど後方に下がることになる。
そうなれば、前線で中国軍と対峙するのは自衛隊だけになる。アメリカ軍が後方で体制を整え支援に来てくれるまで持ちこたえられるかどうか、自衛隊には、その覚悟と相応の準備が求められるのは言うまでもない。
そして、それ以上に、与那国島など八重山諸島の各自治体では、単なる防災訓練ではなく有事に備えたシミュレーションの作成、そして実際に避難訓練を行うなどの実践が急務と言えるだろう。