11月のアメリカ大統領選で、初の女性大統領は誕生するのか。政治ジャーナリストの清水克彦さんは「高市早苗氏も『初の女性首相』がかかった自民党総裁選で惜敗したが、党関係者に取材すると『女性という点に抵抗がある議員は大勢いた』という声があった。日米ともに根深いミソジニー(女性嫌悪)を抱えている」という――。
左)高市早苗、右)カマラ・ハリス副大統領
左)高市早苗氏(写真=内閣府/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons)、右)カマラ・ハリス副大統領(写真=アメリカ合衆国連邦政府/ローレンス・ジャクソン/PD-USGov-POTUS/Wikimedia Commons

ハリス氏にもトランプ氏にも吹かない風

11月5日(日本時間6日)に行われるアメリカ大統領選挙まで2週間あまり。民主党のカマラ・ハリス副大統領(59)と、ホワイトハウス奪還を目指す共和党、ドナルド・トランプ前大統領(78)との戦いは、どちらが勝つか、依然として不透明なまま、最終局面を迎えている。

その最大の理由は、アメリカで「分断」が深刻化し、選挙前から政権を維持したい民主党支持層と、トランプ信奉者が多い共和党支持層に色分けされてしまったことにある。

全米の有権者のうち、これまで3割~4割程度いると見られていた無党派層は減り、どちらの候補者も「風」を吹かせる余地を失くしてしまっているのだ。

もう1つは、ハリス氏とトランプ氏ともに、長期間、風を吹かすことができない「弱い候補」という点だ。今年7月、トランプ氏銃撃事件で一気に高まった「もしトラ」の可能性は、民主党候補がバイデン大統領(81)からハリス氏に代わった途端、急速にしぼんだ。

そのハリス氏も、後継指名された直後の期待感はなく、全米を対象にした世論調査で、わずか2%から3%、トランプ氏をリードしている程度だ。1992年のクリントン氏対ブッシュ氏以降、現地で取材してきた筆者からすれば「誤差」の範囲だ。

政治専門紙「ハリス氏では勝てない4つの理由」

そうした中、ワシントンの政治専門紙「THE HILL」が、10月12日の電子版で「The 4 reasons Harris is losing」(ハリス氏が負ける4つの理由)と題した記事を公表した。

これは、かつてホワイトハウスで高官を務めたグラス・マッキノン氏が寄稿したもので、「The first is Harris herself.」(まず、ハリス氏本人に問題がある)などとする理由を4つ示したものだ。その概要をまとめておく。

(1)ハリス氏は良い候補者ではない
自信がなく、リハーサルも吟味もしていない政策に関する質問を受けるのを恐れているように見える。
(2)バイデン政権の踏襲でしかない
ABCテレビのインタビューで、司会者が「過去4年間で、バイデン氏と違うことを何かしましたか?」と尋ねた際、「思い浮かぶことはない」と答えた点は、民主党員や主要メディアを落胆させた。
(3)熱狂的な支持者がいない
トランプ氏には岩盤支持層と呼べる信奉者がいる。それは、買ったり作ったりすることができないものだが、ハリス氏には残念ながらそういう熱い支持者がいない。
(4)4年前より国民の暮らし向きが良くなっていない
世論調査で「4年前よりも今の方が幸せですか?」という質問に「4年前のほうが幸せだった」と答えるアメリカ国民が多い。これはつまり、バイデン・ハリス政権の失政を意味する。