決選投票で215票‐194票と、石破茂氏が1回目投票1位だった高市早苗氏に逆転勝利。9月27日に投開票された自民党総裁選の生中継番組の視聴率を分析した次世代メディア研究所代表の鈴木祐司さんは「数字を細かく見ると、決選投票前に視聴者はすでに軍配を上げていたことがわかる」という――。

自民党総裁選の生中継番組があぶりだした真実

過去最多9人出馬および決選での逆転勝利と波乱続きだった自民党総裁選。

事前には高市早苗氏有利とする評論家も少なくなかった。「積極財政」や「女性初の総理」への期待、また、唯一派閥の領袖である麻生太郎副総裁が支持に回ったと報じられ、票が上積みされるのではないかとの分析も飛び交った。

ところが、ふたを開けてみれば、決選投票は21票差で石破氏が逆転勝利をおさめた。意外と思った方も多かったようだが、実はテレビ中継の視聴率を分析すると、視聴者は投票前に軍配を上げていたことが浮かび上がる。

総裁選はどう見られていたのかを、TVS REGZA社「TimeOn Analytics」データで振り返る。

NHKと日テレの2強

総裁選については、テレビ東京を除く全局が中継した。

ただし午後1時から4時まで中継し続けたNHK以外、民放は通常番組と特番を織り交ぜながらの中継だった。

視聴率のトップはNHK。

【図表】9/27自民党総裁選中継 各局の視聴率推移
出典=TimeOn Analytics

事件・事故・災害の際の特番に強いという評判は、今回3時間ほどの特番でも保たれた。ただし新総裁が決まる瞬間こそ断トツだが、その後は、視聴率は半減して急速に視聴者に逃げられ、1位の座を明け渡しており、記者の解説などが退屈に感じられたのかもしれない。午後3時台でNHKを上回ったのは、日テレ。見せ方が一枚上手で、「“へなちょこ”ばかりが出ている」といった元外相の田中真紀子氏の毒舌コメントが冴えわたった。

【図表】自民党総裁選中継 視聴率推移と放送内容
出典=TimeOn Analytics

山場はやはり新総裁が選出された瞬間(午後3時23分)だ。その時間に向かって、NHKの視聴率は上昇基調を続けた。ただし右肩上がりでずっと続いたわけでない。数字が急伸する瞬間もあれば、逆に下落に転ずる時もあった。

NHKの番組が始まって、新総裁が選ばれるまでは144分。

この間に視聴率は3.3%上昇した。1分あたり平均0.023%上がり続けた計算になる。政局の決定的瞬間に向け、多くの人がテレビをつけ、しかもNHKを見にきていたのである。

とはいえ、数字が急落あるいは上昇が止まった局面があった。

これはNHK総合に入ってきた人と同等かそれ以上の人が見るのをやめたことを意味する。つまり、その瞬間に映し出された候補者の評価を示すいわば民意のバロメーターだったのである。