「一気見した」「神キャスティング」「地上波ではできない攻めた内容」……ネットフリックスのドラマ「地面師たち」が国内外で大反響を呼んでいる。だが、次世代メディア研究所代表の鈴木祐司さんは「エグイ殺し方やエログロなど速いテンポで強い刺激を連打した“娯楽性”や、実際の事件をモデルにしている“時代性”は抜群だが、見終わった印象が悪く、心に残るものがない」という――。
Netflixドラマ「地面師たち」の快進撃が続いている。
配信から4週間。Netflix日本の「今日のTOP10(シリーズ)」で独走し、世界全体でも非英語ドラマで第4週は2位となった。
確かに日本の地上波ドラマにはない“攻めた”内容だ。キャスティングや俳優の演技も卓越している。エンタメとして一級品と言えよう。ただし快作と認めるものの、名作としての読後感はイマイチと言わざるを得ない。
配信ドラマの現在を象徴する同作に、何が欠けているのかを考察する。一部、ネタバレを含む内容であることをあらかじめお伝えしておこう。
“攻めた”設定と実名主義
同作の人気は、第一に“攻めた”内容にある。
描かれたのは「地面師」が仕掛ける土地を巡る詐欺事件。ただし内容は複雑かつ専門的で簡単ではない。土地所有者に成り代わり、詐欺のターゲット・買主に購入させて代金を騙し取る犯罪だ。詐欺集団はリーダーの下、交渉役・法律屋・手配師・情報屋・ニンベン師など、多くの専門家が関わっている。
騙される側も、不動産業者が弁護士などと一緒に交渉にあたる。
なりすましの土地所有者はじめ、偽の土地権利書・身分証明・実印などのチェックは綿密に行われる。スペシャリスト同士の交渉は、一定の専門知識がないと正確には理解できない。地上波ドラマが真正面から取り上げなかった所以だ。
ドラマは7年前の実際の事件「積水ハウス地面師詐欺」がモデル。他にも東急・三井・森などの実存の不動産会社をはじめ、騙される側が自民党建設族の妻が関わっているので信用してしまうなど、実名が次々に登場する。リアリティは極めて高いと感じさせる。
SNSにも、こうした要素を評価する声が多い。
「実名で会社名もバンバン出しちゃうって、映画も地上波も絶対無理だよね」
「上質な騙しテクニックがめちゃくちゃ面白かった」
「専門的な用語が多くて難しい部分もあったけど、勢いで楽しめるのが救い」
「上質な騙しテクニックがめちゃくちゃ面白かった」
「専門的な用語が多くて難しい部分もあったけど、勢いで楽しめるのが救い」