パリ五輪で金メダル20個を獲得した日本代表。柔道、レスリング、体操といったお家芸に加え、フェンシング、水泳の飛び込み、馬術、ブレイキンといった競技での活躍も光った。時差8時間で深夜から早朝に集中したテレビの生中継で視聴者はどのように五輪を楽しんだのか。次世代メディア研究所代表の鈴木祐司さんが総括した――。
オリンピックに彩られたパリ
写真=iStock.com/Alexandros Michailidis
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パリ五輪が終わった。

日本人アスリートによるメダルラッシュで、テレビにくぎ付けになった視聴者も少なくなかっただろう。ところが、中継番組などの見られ方を分析すると、テレビ局間や競技間で明暗が生まれていたことがわかる。またIOCによる若年層狙いの成否も浮かび上がる。7月26日から8月9日までの視聴データから、多くの人々が燃えたパリ五輪を総括してみたい。

開会式での特徴

夏季五輪史上はじめてスタジアムの外で開会式が行われたパリ五輪。

評価は分かれる部分もあるが、街全体というキャンバスに光と色そして歴史と芸術で彩った演出は、フランスらしい記憶に残る祭典となった。

開会式では、2度の放送の関係が印象的だった。

NHKが午前2時台から4時間ほど生中継をした。一方、テレビ朝日は直後朝8時から3時間にまとめて伝えた。

【図表1】パリ五輪開会式放送での特定層別視聴率~NHK生中継とテレ朝録画版の比較~
スイッチメディア「TVAL」データから作成

フランスと日本の時差は8時間。

このため頑張って起きてテレビと向き合うか、無理をせず自分のペースで見るのか、人々の判断は分かれた。結果は、いち早く深夜早朝に放送されたNHK生中継の個人視聴率は、皆が起きだす8時からのテレ朝番組の半分ほどにとどまった。睡眠を削ってまでは生で見なかったのだ。

●男は深夜の「生中継」にこだわった

ただし、それは視聴者の平均値。

実際には、属性で大きな差が生まれた。まず際立つのが男女差。T層(13~19歳)から3層(50~64歳)まで、ことごとく男性が女性を上回った。中にはM1(男性20~34歳)のように、テレ朝の録画版とほぼ同数の青年が早起きしてリアルタイムに堪能した層もあった。4層(65歳以上)だけ例外で女性の視聴率が高いが、それ以外の層では男たちが生放送のために起き、女たちはマイペース(例えば、朝食を摂りながら)で楽しんだようだ。

●10代男子も食いついた

性差だけでなく、年齢差も明確だった。

さすがにC層(4~12歳)は眠さに勝てなかったようだが、MT(男性13~19歳)以降はリアルタイムにこだわった。中高生男子も起きない親を無視して、一人でテレビ画面と向き合った少年が多かった。そしてM1がピークで、年齢が上がると共に男女とも無理をしなくなっている。

オリンピックだからなのか、深夜早朝という非日常ゆえなのか、男性の燃え方が顕著だった。

●関心の持ち方でも差

もう1点、興味深いのが関心のあり方による差。

さすがに「スポーツに関心あり」層は生中継派が多かった。特に20代以下では、テレ朝録画版の1.6倍に至った。こだわりの強さが表れた。

次に「ダンスに関心あり」層。

「スポーツに関心あり」層の平均を上回った。どんなパフォーマンスが見られるのか、スタジアムを飛び出したイベントの完成度は如何ほどか、芸術性へのこだわりが視聴率にも表れた。

さらに「国際問題に関心あり」層が気を吐いた。

政治・経済・社会の各問題に関心あり層より多い。200カ国以上および難民選手団が参加する大イベントには、海外通も寝ていられなかったようだ。

以上のように開会式1つとっても、パリ五輪の特徴は視聴率に表れていたと言えそうだ。