競技別の明暗

全体状況とは別に、競技別にも明暗がわかれた。

赤の棒グラフで示す個人視聴率(GP帯)の上位を見ると、男子準々決勝(5日、対イタリア)、男子予選(7月31日、対アルゼンチン)、女子予選(同)などベスト5のうち4位までをバレーボールが占めた(図表3)。球技の中でもゲーム展開がスリリングでテレビ向きであること、人気選手が活躍していること、そして日本が熱戦を繰り広げた点が大きかった。

【図表3】GP帯中継番組の見られ方比較
スイッチメディア「TVAL」データから作成

他には柔道や卓球が気を吐いた。柔道90kg級の村尾三四郎選手(銀メダル)の準々決勝(7月31日)は個人視聴率5位、卓球男子団体3位決定戦(9日)は同6位だった。日本が強く知名度の高い選手が出場してなど、テレビ的な要素のある競技が上位に入った。

一方で意外に低迷した競技もある。

放送時間が深夜早朝となったもの、期待通りにベスト4に進めなかった種目などだ。サッカー男女、バスケット男女などが残念な結果に終わっている。

一方で明るい兆しも見えた。

IOCが若者対策として正式種目に組み込んだ競技が、目論見通り若者にリーチしていた点だ。例えば大逆転で2連覇を果たした堀米雄斗のスケートボード男子ストリート。個人視聴率では12位だったが、コア層では5位に入った。

また個人視聴率では振るわなかったBMXリースタール。

「スポーツ好き20代以下」の視聴率は5位に浮上し、含有率では「スポーツ好き60歳以上」を上回った。やはりオリンピックには、新たな波を作り出す余地があると言えそうだ。

●ロスオリンピックに向けて

以上が8月9日までの視聴データからの総括だ。

開会式の例のように、時差があっても視聴者を惹きつける演出はあり得る。また競技人気にばらつきがあるものの、中高年コンテンツになり始めている五輪を、若者向けに進化させる余地は残る。

一方でテレビ局間の明暗の問題が残る。

長年続けてきたJCという慣習は、放映権の高騰と視聴率の低下という現実を前に、見直す余地があるのではないだろうか。

米国ではNBCが1局で独占的に放送している。しかもインターネットに注力し、莫大な権利料を支払いつつも黒字を保っているという。新たに最適な伝え方を工夫すべきだろう。

次回、2028年のロス五輪では、さらなる新種目が登場する。

TBSが長年放送してきた『SASUKE』が、「キング・オブ・スポーツ」と呼ばれる近代五種の中の馬術に代わって入る予定だという。時代と共に変化・進化するオリンピック、世界的なスポーツの祭典がより面白くなることを期待したい。

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