前代未聞の「派閥なき総裁選」が始まる

9月12日に告示され、27日に投開票される自民党総裁選。

過去に例を見ない大乱立となり、選挙戦が始まる前から混戦状態となっている。

その中で、実は各候補者の戦い方もこれまでの自民党総裁選とはまったく違う形に変化している。

一体それはどういうものなのか。

総裁選に向けた動きを分析しながら、総理総裁が誰になるのか、その行方を展望していく。

「今回の自民党総裁選はほぼ人気投票だ。政局のコントロールが効かず、とんでもない人が総理大臣になる可能性がある」

総裁選に向けて慌ただしい動きを見せる永田町で自民党関係者はそう語った。

政局のコントロールが効かない理由は大きく2つある。

1つは自民党裏金問題を受けて、派閥の多くが解散したこと。

もう1つは、その影響もあって候補者が乱立する状況になっていることだ。

自民党本部に設置された党総裁選の横断幕
写真=時事通信フォト
自民党本部に設置された党総裁選の横断幕=2024年9月2日午後、東京・永田町

「勝ち馬に乗る」従来の戦略が成り立たない

岸田文雄首相が立候補を模索している段階までは、後見人である麻生太郎副総裁が多数派工作のために茂木敏充幹事長や森山裕総務会長に働きかけるなど、旧来の派閥的な動きが残っていたが、退陣表明後はせきを切ったように推薦人集めが本格化。

本命候補がいない中で、「勝ち馬に乗る」という戦略が成り立たず、候補者が乱立する状況を生み出した。

従来ならば、誰を応援したか氏名が公開されてしまう推薦人になるのは、選挙戦に敗れた場合に冷や飯を食わされる恐れがあるため敬遠されることも多く、立候補に必要な20人の推薦人を集めるのは至難の業とも言われていた。

しかし、今回は自民党が裏金問題で未曽有の危機的状況に陥る中、党改革のためにさまざまな候補者が舌戦を繰り広げることを歓迎する節も出てきており、それによって推薦人集めのハードルが下がったことも、多くの人が手を挙げることを容易にしたと見られる。

「決着」と書かれたさわやかなブルーを背景に総裁選への立候補を表明する小泉進次郎氏
筆者撮影
「決着」と書かれたさわやかなブルーを背景に総裁選への立候補を表明する小泉進次郎氏