決定打は最後の演説
1回目の投票で1~2位となった両候補。決選投票の前に演説をすることとなったが、ここでも明暗が分かれた。
前述したが、時間を追うごとに視聴者数が増えたので、先に演説した石破氏のほうが平均値は低い。それでも石破氏が演説した5分間はほぼ右肩上がりとなった。
一方で高市氏の途中まで4分間は微増にとどまった。流入者が多い中での微増とは、やはり流出者が一定程度いたと推定される。
ところがその後、高市氏の数字が急伸する。
実はNHKの中継に限らず、民放各社の中継でも同じタイミングで上がっていた。つまり、ここでテレビを見始めた人が一定程度いて、演説中の高市氏に関するSNSを発信したようなのだ。
「演説になると薄口でうそ臭くなる」
「しらじらしい演説している」
「話題があっちこっち飛んだ上に薄っぺらい」
「高市のこの演説で大丈夫か日本」
こうした意見がXに飛び交った後に、視聴率が急伸し、そして再び横ばいとなった。
そして高市氏の演説後に、さらにネガティブな声が増えた。
「ん? 高市、時間オーバーかよ」
「素人目に見ても時間配分も構成も微妙だった」
「まるでヒーローインタビューみたくなってしまっていた」
「石破の演説は国民に向かっての演説、高市の演説は自民党議員に向かっての演説」
実際に投票したのはテレビ視聴者ではなく国会議員や党関係者だ。
それでも画面を介して視聴者が感じた思いは、会場で聞いていた国会議員や党関係者の中にも共有した人がいただろう。期せずして直前の石破氏は「ルール遵守」の重要性を訴えたが、直後に高市氏が時間オーバーの警告を受け、中途半端に演説を終えた。
有利との下馬評も、最終的には21票差で逆転された高市氏。会場にいた国会議員はテレビを見ていないので、VTRでの発言などは関係ないが、決選投票直前の演説では、視聴者と同様に国会議員の判断を変えた可能性もある。演説を通じて表れた「存在感」が今回の鍵だった可能性が高く、画面からにじみ出ていたものを多くの視聴者もしっかり感じ取っていたようだ。