なぜエネルギーだけでなく食料も上がっているのか

その要因の一つとして、食料の価格上昇は大きい。日本銀行によると、豚肉、鶏卵、干のりなどの農林水産物や、総菜やマーガリンなどの飲食料品の価格上昇に直面する本邦企業が増えている。

また、総務省によると、世界的な資源価格の上昇による光熱・水道費の上昇も重なり、食料品価格が上昇し消費者物価指数を押し上げている。一見すると、ウクライナ危機などを背景とする原油や天然ガスなどエネルギー資源の価格上昇が大きいため、光熱・水道費の値上がりのインパクトが大きいとの見方が先行しやすい。ただし、エネルギー資源の価格と食料価格の上昇は密接に関係している。

例えば、多くの野菜の生産はビニールハウス内の温度や湿度などを適切に管理しなければならない。冬場であれば、灯油を用いてハウス内の温度を上げなければならない。畜産の現場でも光熱費は牛や豚などの育成状況に無視できない影響を与える。肥料や飼料の生産や運搬、野菜や穀物収穫時の農業機械の稼働にも多くのエネルギーが消費される。

世界的に食料の需給が逼迫ひっぱくし、それに加えてエネルギー資源の需給も急速にタイトになった結果として食料品の価格が急騰しているのである。その帰趨としてわが国の物価は上昇している。

異常気象とコロナ禍でじわり上昇していたのが…

国内外での食料価格急騰の背景要因として、大きく3つが指摘できる。まず、世界的な異常気象だ。地球の温暖化によって、世界各地で熱波や洪水、旱魃かんばつなどが深刻化している。洪水によって農地が流される、高温によって作物の育成不良が発生する、家畜が死んでしまうといった問題が世界全体で増えている。その一方で人口大国である中国やインドなど新興国では食料需要が増え、世界全体で食料の供給が需要の伸びに追いつかなくなりつつある。

その上に、コロナ禍が発生し、食料不足が深刻化した。最大のポイントは動線の寸断だ。感染対策としての都市封鎖などによって人々の外出は制限された。その結果、農作物の収穫が減少した。例えば、食用油として使われるパーム油の主要な供給国であるマレーシアやインドネシアでは、2021年夏場のデルタ株による感染再拡大によって農場労働者が急減した。徐々に回復はしているものの、人手不足は解消されてはいない。