100円ショップが成立する理由

この100円ショップの高価格業態戦略は成功するでしょうか? 高価格業態への進出についてダイソーにとっては実は大きな注意点があります。

みなさんも100円ショップと300円ショップで、それぞれレジに並ぶ行列を眺めてみると面白いと思います。なぜなら明らかな違いに気づかされるからです。100円ショップの顧客のかごの中には商品がたくさん入っているのですが、300円ショップの顧客はかごを持たずひとつかふたつの商品を手に持ってレジに並んでいるのです。

この消費者習慣の違いから100円ショップと300円ショップのビジネスモデルに違いが生まれます。

そもそも100円ショップが成立する理由を整理してみるとこういうことです。まず消費者は100円ショップに頻繁に出かけるのが生活習慣になります。そしてお店ではついついたくさん購入しがちになります。また買いに行く手間を考えたら「迷ったら買う」行動に出るのです。そしてその結果、お店から見れば原価が高いものと安いものが一緒に売れていくことになります。びっくりするほどお得な商品もあるのですが、原価が低い商品も売れるから100円でも利益が出るのです。

写真はStandard Productsマロニエゲート銀座店。
写真はStandard Productsマロニエゲート銀座店。

300円ショップが成功するための2つの条件

一方で300円ショップでは消費者が商品を吟味して買います。ここが大きな違いです。もちろん単価が高いのでひとりが1~3個しか買わなくても売上高はそこそこの金額になります。しかし「もしだめだったら捨てればいいから」という感覚で買い物をする消費者はそれほど多くはない。結果として出来の悪い商品や割高な商品は売れ残ってしまいます。

そうなるとこの業態が成立するためには目利き力や仕入れ力が非常に重要になります。それが必要条件だとすれば、十分条件としてはそのうえで利幅もちゃんと大きいことも必要になります。100円ショップ業態ではかつては原価が60%台といわれてきました。冒頭に述べたような昨今の経済事情から目下の原価率はさらに上がっているはずです。

しかしついで買いやずぼら買いが期待できない300円業態では原価率をもっと低く抑えないと全体では利益を出せません。この「目利き力や仕入れ力が重要」という点と「原価率が100円ショップよりも低くないと成立できない」という条件はどちらも、店舗を100円ショップのようには拡大できないという制約条件にもなります。

そしてもうひとつ大きな違いがあります。100円ショップでは「競合相手と圧倒的な価格差がある」点が消費者から支持される理由です。ところが300円業態では競合相手もなかなかに価格が低いものです。