補助金がなければガソリンは200円を超えている

ガソリンの高値が続いている。いよいよ夏の行楽シーズンの到来だが、愛車を満タンにするだけで1万円札が飛んでいく。日々の生活に車が不可欠な人にとっては、さらに負担は重い。賃金が増えない中でどこから資金を捻出するか。値上がりしているのは、電気代もガス代も食料品も軒並みである。

それでも今のガソリン価格は、政府が巨額の補助金を投じて必死に価格を抑えている結果だ。石油情報センターの調査では、7月19日時点でレギュラーガソリンは1リットル当たり171.4円。3週連続で値下がりしているものの、経済産業省が1リットルあたり36.6円の補助金を石油元売会社に出しており、実態としては、依然として200円を超えている。

記者の質問に答える岸田文雄首相=2022年4月26日午後、首相官邸
写真=時事通信フォト
記者の質問に答える岸田文雄首相=2022年4月26日午後、首相官邸

世界経済の減速懸念から原油の国際価格は若干下落傾向にあるとはいえ、為替の円安が進んでいることもあって、国内ガソリン価格が早期に下落する見込みは立っていない。経産省の補助金も膨らむ一方で、いつまで政府が価格を抑え続けられるのか。「出口」がまったく見えなくなってきた。

膨れ上がる補助金…総額1兆6000億円を投じることに

岸田文雄内閣が石油元売会社への補助金を出し始めたのは、今年1月27日から。当初は1リットルあたり5円を支給していた。その予算は2021年度の補正予算から800億円が充てられた。しかし、その後、ウクライナ戦争が始まったこともあり原油価格は高騰。経産省は補助金を3月10日から25円に引き上げた。昨年度の予備費から3600億円余りを支出することとした。

岸田首相は4月26日に記者会見に臨み、「総合緊急対策」を公表。その柱の第1として原油価格高騰への対策を掲げた。1兆5000億円を投じて新たな補助制度を設けるとし、補塡ほてんの上限を35円に引き上げて、「仮にガソリン価格が200円を超える事態になっても、市中のガソリンスタンドでの価格は、当面168円程度の水準に抑制します」と大見得を切った。さらに35円を超えて補助が必要になった場合、価格上昇分の2分の1を補助するとした。

この方針を受けて、4月28日からは発動基準は「172円以上」から岸田氏の表明した「168円以上」に下げ、補助額も35円プラス超過分の半額補助に引き上げた。期間は4月末までだったものを、9月末までに延長した。これによって政府は、総額1兆6000億円の巨額の資金を投じることになった。

要は、政府が「市場価格」に対抗して、「公定価格」を貫き通そうとしているわけだ。世界につながっている市場の価格を、政府がカネを注ぎ込むことでコントロールできると思っているのか。本当に政府は市場に勝てるのか。