補助金の大判振る舞いは、選挙戦略の一環だった

問題はそんな大盤振る舞いをいつまで続けられるか、だ。あくまで緊急事態に対処するための時限的な措置という建前だから、現状の9月末までという期限を守って、補助金を廃止することになるのか。

その場合、仮に今のままの原油価格で推移したとすると、いきなりガソリン価格が35円以上も跳ね上がることになる。当然、政権への批判が噴出することになるだろう。9月末のガソリン価格が200円弱で推移していたら、補助金を止め、トリガー条項を発動させて25.1円の減税に切り替えることもできる。だが、200円を大きく上回っていた場合、減税分だけでは穴埋めできず、補助金を止めれば価格が急騰することになる。そうなると、永遠に「出口」が見えなくなり、原油価格の下落を祈る以外に方法がなくなってしまう。

岸田内閣は、7月の参議院選挙に勝つことを最優先に、いくつもの「出口戦略」を先送りしてきた。4月にガソリンの補助金をぶち上げたのもインフレ対策を強調する選挙戦略の一環だったと見ることもできる。

市場原理を敵視する岸田政権

さらに、企業が余剰人材を解雇せずに抱えさせる「雇用調整助成金」の期限も6月末から9月末に延長されている。新型コロナウイルス蔓延で経済が凍りついたタイミングでは、雇用調整助成金の効果は大きかったが、長く続ければ「麻薬状態」になり、本来必要な労働移動を疎外してしまう。にもかかわらず、「出口」を先送りしてきたのだ。世界的なインフレと円安によって輸入物価が猛烈に上昇する中で、雇用調整助成金を打ち切れば、一気に失業者が増える懸念もある。

岸田首相は就任前の総裁選時から「新自由主義的政策は取らない」と言い、「新しい資本主義」を標語として掲げてきた。何を具体的に実行しようとしているのかは、いまだに分からないが、どうも「市場原理」を敵視しているように見える。ガソリン市場にせよ、労働市場にせよ、政府がコントロールできると考えているのではないか。

だが、赤字財政の中で膨大な予算を使い続ければ、結局は日本の国力が低下し、円はどんどん弱くなる。するとさらに輸入原油の円建て価格は上昇し、ガソリン価格は上がっていく。そんな負の連鎖につながっていくことになりかねないだろう。

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