高額求人でも兵士が集まらない…ロシア軍が短期決戦を図るワケ

ウクライナ東部への攻撃を強化するロシア軍だが、ドンバス地方制圧を急ぐ背景には相当の焦りがあるようだ。兵力を集約させ短期決戦を図るロシアは、兵士の頭数不足により長期戦の維持が困難となってきている。

ロシアの独立系報道機関『モスクワ・タイムズ』は5月下旬、「ウクライナによる決然とした防衛」を相手にロシア軍が複数の前線で交戦しており、これが「ロシアの歩兵予備隊をひどく減損させた」と報じた。

ウクライナ南東部マリウポリで、警備に当たるロシア軍兵士=2022年5月18日(ロシア軍主催のメディアツアーで撮影)
写真=AFP/時事通信フォト
ウクライナ南東部マリウポリで、警備に当たるロシア軍兵士=2022年5月18日(ロシア軍主催のメディアツアーで撮影)

結果、このところロシア国内の複数の都市で、兵員募集の横断幕などが多く見られるようになっている。同紙によるとモスクワ近郊の都市では、現地の平均月給の4倍をうたう募集が確認されており、その提示金額は17万ルーブル(約35万円)にも達する。高額での勧誘に、前線での深刻な欠員が透けてみえるかのようだ。

しかし、高額募集をもってしても兵力の補充は追いついていない。モスクワ・タイムズ紙は軍事アナリストの見解として、ロシア軍が「その場しのぎで編成した軍」で急場をしのいでいるとの分析を報じた。苦境のロシア軍は各部隊で生き残った残党を寄せ集め、応急的な部隊を編成して前線を維持している模様だ。

一般に、侵攻する側の軍が敵陣を落とすには、防御側の3倍の兵力が必要だとされる。しかしイギリス当局の分析によると、ロシア軍は優勢を確保するどころか、2月の侵攻開始以来投入した兵力の3分の1をすでに失った。兵力比3対1には「ほど遠い」状態だとモスクワ・タイムズ紙は嘆く。

つぎはぎだらけのロシア部隊

軍事アナリストのミカエル・コフマン氏は5月14日、外交・安全保障誌『ワー・オン・ザ・ロックス』によるポットキャスト番組に出演し、「現段階においてロシア軍は、複数部隊の一部をその場しのぎで編成した軍でこれ(ウクライナ軍)と戦っている」と述べ、兵力の限界を指摘している。