評価のしやすさで、動画選別の精度が高まる

逆に、最近「いいね!」を押しにくいと感じるSNSはないだろうか。

SNSのいいね
写真=iStock.com/Diy13
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例えば、フェイスブックは現実の人脈に基づくつながりなので、「いいね!」がもたらす副作用を考えてしまい、押しにくいといったことがあるかもしれない。何気ない挨拶のようなつもりで押した「いいね!」でも、相手に好意を示したり(あるいはその逆もしかり)など、人間関係に何かしらの影響が及ぶ可能性がある。

また、自分が「いいね!」した投稿が知人友人のタイムライン上に出てしまう場合もあるので、それも躊躇ちゅうちょさせる要因となる。

TikTokの場合は、そもそもソーシャルグラフとあまり関係がないし、おすすめに出てくるのも基本的には知らない人々だ。どのショートムービーに「いいね!」を押そうが、誰かに何かを知られたり悟られたりするわけでもない。強いて言うと、レコメンドアルゴリズムにあなたの好みが類推される程度のことだ。

この「いいね!を押しやすい」という特性は「夢中になる理由③」にも関連していることが重要だ。すなわち、TikTokの競争力の源泉はコンテンツマッチングのアルゴリズムの精度にあるが、コンテンツが短尺でユーザーが「いいね!」やコメントをしやすいからこそ、大量に機械学習できて面白いコンテンツを選別する精度が向上していくという特性に支えられている。

サービスを支えるAIの視点から捉えると、たくさんのテストデータがどんどん集まってくるわけだ。また、このようにして良いコンテンツとそうでないコンテンツを手軽に選別できることは、見る側はもちろん、作り手・発信者の側にとってもPDCAが回しやすいという恩恵をもたらしている。

撮影・編集・配信…すべての工程がスマホ1台で完結

これまで「動画をつくる」というと、ビデオカメラやデスクトップとともに高度な編集用ソフトを揃え、お金と時間、技術と気合いをかけてつくるものを指していた。

しかし、いまでは撮影から加工、パブリッシュに至るまで、すべての工程をスマートフォンひとつで完結してしまえる。TikTokに投稿されているショートムービーの多くもユーザーが独力で制作しているからこそ、1日に複数の動画を投稿することも稀ではない。

他のプラットフォームの長い動画コンテンツは、スマートフォンのみでは撮影や編集を完結させることが難しいし、いまとなってはユーチューブ・クリエイターなどはその周りにカメラマンや編集など映像制作のためのチームを構成していることも珍しくなくなってきた。

それは、そのようにしてクオリティを保たなければ見てもらえないほどに競争が激しくなってきているためでもある。もちろん、TikTokも今後そのようになっていく可能性は否定しないが、原理的にスマホひとつで手軽に誰でもが発信できるというポジションを手放すことはないはずだ。