不器用な人間が描かれた昔のドラマには奥行きがあった
その昔、私が子供の頃、ドラマに出てくる大人たちはみな不完全だった。お調子者の見栄っ張りだったり、色恋にだらしなかったり、理性にブレーキがかからなかったり、口や素行がとてつもなく悪かったり。
といっても、芯はまっとうで決してひとでなしではない。そんなちょっとダメな大人が山ほどいて、それを許す社会があった。
今と違って、人との関わりを断つと生きていけない時代だったから、業や欲を抱えたままもがいて生きていく。その姿がドラマに奥行きをもたらした気がする。
寛容を教えてくれた、昭和の名作の数々……。ということで、1972年生まれの50歳の女が偏向はなはだしく超主観的に選んだベスト10をお届けする。各種配信サイトなどで視聴できるので、ゴールデンウィークのお供にどうぞ。
清くも正しくも美しくもない。だが傑作
10位「不良少女とよばれて」(TBS・1984年)不良のレッテルを貼られた劣等感を描く
セリフが臭くて独特な大映ドラマの代表作。情に厚くて一途な不良少女たちの、無駄に高いエネルギー値に魅了された。
主人公の曽我笙子(いとうまい子、当時は伊藤麻衣子)が入った少年院の壁には「人生やり直しができる」の書が。凶悪な不良少女たちを見捨てない園長(名古屋章)が「君たちにとって最大の障害も最大の味方も人間だ」と説法していたのが印象深い。
非行が問題視されていたが、親と社会にも問うものが大きかった。ベタなドラマを憎めなくなったのは、この作品が原点にあるから。
9位「淋しいのはお前だけじゃない」(TBS・1982年)清くも正しくも賢くも美しくもない人々
主人公はサラ金業の沼田薫(西田敏行)。ヤクザの親分・国分(財津一郎)に背き、借金の連帯保証人にされてしまう。借金まみれの人間を集め、芝居で稼ぐ一座を立ち上げることに。ダメな大人たちが地を這う借金返済生活を送っているのに、どこか楽観的でエネルギーにあふれていた。
生々しい借金の話を描く作品は「清く正しく賢く」が王道だが、これは清くも正しくも賢くも美しくもなかった。「ステキ」「憧れる」とは1mmも思わせなかった、大傑作である。