4位「阿修羅のごとく」(NHK・1979年)家族だからこその「うしろめたさ」炸裂さくれつ

性格も考え方も異なる四姉妹が、父の不貞を機に集結。それぞれの来し方行く末を描く。四姉妹を演じたのは、加藤治子・八千草薫・いしだあゆみ・風吹ジュン。

父が子連れ女性の家に通っていることを知った三女が探偵を雇い、証拠も握る。姉妹で力を合わせて、父の愚行をやめさせて、母を支える……という話ではない。

長女も道ならぬ恋をしていたし、次女の夫にもどうやら女がいるとわかる。実は母も父の不貞を知っていた。平穏を装っていたものの、心に阿修羅のごとく深い怒りを秘めていた。家族だからこその「秘密の暴露」や「うしろめたさ」が実に興味深かった。

大人になってから、「阿修羅のごとく」に出てきた場面と同様の体験を何度かした。40年以上も前に向田邦子が描いた業の深さと人間の本質。その普遍性には驚愕きょうがくするばかりである。

TBS制作ドラマのツートップ

3位「寺内貫太郎一家」(TBS・1974年)けんかや気まずさを存分に引き出す老婆の存在感

主人公・寺内貫太郎(小林亜星)の母親・きんを演じた樹木希林(当時は悠木千帆)の怪演。意地汚く、食べ物を口から飛ばしながらしゃべる。息子と孫(西城秀樹)の肉弾戦のけんかに参戦し、嫁(加藤治子)やお手伝いの美代ちゃん(浅田美代子)に嫌みと意地悪を言う。盗みやイタズラも日常茶飯事。微妙な女心や虚栄心にさとく、思ったことはすぐ口にして家庭内にけんかや気まずい空気を生み出す天才だ。

でも、時に女のパイセンとして金言や格言を残す。美代ちゃんに対しても、若さに胡坐をかくな、と暗に諭す場面があった。

「ちやほやされる場所にいてはいけない。年くったら何にもなくなる」と。ただ意地悪なだけではない。本当に必要なのは口が悪くても本音と現実をぶつけてくれる人だ。

こんなおばあちゃん、これ以降のドラマで遭遇していない。日本では、いつまでも若々しく控えめで行儀よく本音を言わず迷惑をかけず……が女に強いられている。目指すべきはきんさんなのにね。

2位「ふぞろいの林檎たち」(TBS・1983年)学歴と容姿の格差社会でもがく等身大の若者

三流大学に通う大学生の恋と青春と家族模様を描いた名作。

中井貴一・時任三郎・柳沢慎吾が演じる三人組が知り合ったのは看護学生(手塚理美・石原真理子)。企業も世間も学歴・容姿差別が激しい時代に、若者たちが傷つき、精いっぱいの見栄を張りながら人生を模索する物語だった。

仲手川良雄(中井)は、東京外国語大学の学生・夏恵(高橋ひとみ)が風俗店で働いていることを知るが、彼女とその同居人の本田修一(国広富之)の奇妙な関係に翻弄される。

本田は東大卒の元エリート。ふたりは対等な関係だという。恋愛至上主義全盛期の当時、本田のように恋愛に疑問を抱く人物がドラマに出てきたことが非常に珍しかった。

もちろん、嫁いびりする姑(佐々木すみ江)、容姿差別と闘う女子大生(中島唱子)、大手商社から辛酸をなめさせられる岩田健一(時任)からも目を離せず。等身大の人物と格差社会と言えば、ついこの作品を思い出してしまう。