中国では「食べログ」のような使われ方も
普及期の「○」の時期(図表2)には、一般の人々も自然に投稿できるジャンルが存在感を増してきた。趣味・ライフスタイルのような身近なテーマで、各人が自分の好きなことや日々のアクティビティを発信していく。
つまり、TikTokはいまや特別なものではないということを意味する。ファッションのコーディネートを載せるユーザーも、例えば「初夏のコーディネート」のようにテーマ性を持たせていくつかのコーディネートを切り替えて載せるなど、TikTokらしさが見て取れるようになってきている。
レシピ・料理系も投稿されやすく、時短メニューを紹介したり、料理本に載っているレシピのつくり方など「実際にやってみた」系の趣向も目立つ。アニメやイラストなど、アート系の創作過程やその完成作品をシェアする人も増えてきた。
その中でも食・グルメ系は根強いジャンルで、これまでなら映える料理の写真をインスタグラムでシェアするのがメジャーだったが、動画で撮ることに適した臨場感のあるメニューはTikTokに載せるという作法も普及してきている。写真よりも動画で映えることを意識した、伸びるチーズ系など動きのあるものを準備するお店が増えているのもそうしたトレンドへの対応である。
さらには、臨場感が生まれやすいという特質に加えて、インスタで映える写真を撮ることに比べると、写真の角度や構図といったことを気にしなくても音とエフェクトがあればいい感じにまとまるという意味で、TikTokのハードルの低さを捉えることもできる。現に、中国ではTikTokは食べログのように使われている側面もあり、日本でもそのような使われ方が広まっていくことが想定できる。
ウェブ文化の専門家が「コンテンツ博覧会」と呼ぶ理由
また、筆者自身もよく見ているのがいわゆる「How toもの」だ。ニュース解説から、その道の玄人が教える役立つ仕事術、ダイエットのためのエクササイズ、対人関係を改善する心理学的なTips、そして英会話の一言レッスンまで幅広い――なにせアメリカにはExcelの使い方を解説する人気TikTokクリエイターさえいるのだ! その他にも、メイクアップ、アプリの使い方(写真や動画の編集など)、ヘアアレンジのようなものも動画のほうがわかりやすい。
最近では、いわゆる「専門家のここだけの話や本音」系が増えており、医者などの専門性を持つ人が「常識的にはこう思われているけど、健康になりたければ本当は○○したほうがよい」と伝える類のものだ。
さらには、数として多いわけではないが、人気のTikTokクリエイター・修一朗氏の「妄想アバンチュール」など、TikTokで連続ドラマを配信する例も見られるようになってきた。ユーチューブのダイジェスト版を発信するユーザーもおり、手近さはもちろんのこと、しっかりつくり上げたものをどうシェアするかということも重要になってきていることがわかる。
ウェブ文化に詳しいりょかち氏は、TikTokをさまざまなコンテンツを一覧的に見ることができる「コンテンツ博覧会」と定義する。これまで述べてきたようなテーマと動画の加工の切り口、その広め方を掛け合わせれば、かなり多くの動画のアイデアが浮かんでくるだろう。
そして、繰り返しになるが、そういったアイデアをスマホ一台で苦もなくつくってシェアできることが、ユーザーのクリエイティビティを最大化させることにつながるのだ。