では、どうしたらよいのか。私は、優れたミドルマネジメントが、職場のOJTだけで育つという考えを捨てることから、すべてが始まると考えている。職場でミドルマネジメントが育ってきたのは、ある意味では偶然であり、見るべき魅力的な上司の背中があり、学ぶ過程の若手が試行する余裕があり、さらにこれまでのやり方を学ぶことでミドルの役割が果たせてきたという状況下で初めて機能したのである。すでに述べたようにそうした状況はなくなりはじめている。
だとすれば、もっと意図的にミドルマネジメントを確保するしかないのである。3つが重要だと考えている。第1は、基礎的なコンピテンシーまたはマネジメント行動の教育である。ミドルマネジメントとして多くが迷うのは、実際は具体的な行動面であることが多い。だから迷える初任ミドルは、「初めて課長になった君に贈る言葉」的な書物をベストセラーにするのである。教えられるところは知識として教える必要がある。
そして、第2が優れたミドルが担当となって、後輩をミドルとして育てる仕組みの構築である。現場でのミドル育成の意図的な仕組み化だといってもよい。具体的にはメンター制やブラザー・シスター制などがある。
第3が自己啓発活動の支援と推進である。新しい知を学ぼうとする行動にインセンティブを与え、支援するのである。私の知る限り、今、勉強熱心な若手のサラリーマンが増えている。ほかの所に転職するかもしれないから、などと心配せずに、こうした勉強熱心なミドルとミドル候補が会社を強くすると考えよう。新たな知識やスキルをもったミドルを歓迎し、奨励することで組織は変化に対応できるのである。
(平良 徹=図版作成)