変革を起こす人材を生み出すための3つの方法
だが今、多くの職場で「やってみなはれ」という雰囲気が低下している。職場として失敗を許容しない雰囲気が浸透しているのである。その背景には成果主義や企業内のリスク観の変化などがあるのだろうが、ミニ実践があくまでも「やってみる」経験である以上、失敗が許されにくい職場では若手のチャレンジは起きにくいのである。その結果、重要な学習経験が失われる。
ほかにもあるかもしれないが、これまでのミドルまでの育成がきちんと機能していた環境は大きく揺らいでいるのだ。
さらに、ミドル育成のOJTにおけるもう1つの根本的な問題は、先輩の背中を見て育つ限り、誇張した言い方をすれば、先輩の仕事を超えることができないことである。今、ミドルに求められるのは、これまでのやり方を覚え、それをきちんと実行することだけではない。これまでのやり方を改革し、新たな仕事のやり方を生み出すことである。グローバル化、IT化、M&Aによる多様性のなかでのプロジェクト遂行など、多くの変化が、ミドルマネジメントに、過去とは異なった仕事の仕方を求めている。
もちろん、育成においてはこれまでのやり方を学ぶことが必要な部分も多かろう。だが、OJT礼賛のなかで、これまでのやり方が粛々と受け継がれてきただけの状況はなかったか。またそれが、若手の革新的な行動をつぶしてきたことはなかったか。何度も言うが、OJTというのは熟練工を生み出す生産現場の人材育成では効果を発揮してきた。だが、同時にOJTというものは一定の工夫をもちこまないと、革新を生みにくいのである。新たなチャレンジが求められる経営環境で、ホワイトカラーの人材育成については、OJT依存型を脱しないと、大きな変革を起こす人材は生まれにくいだろう。