まず見るべき背中については、ミドルのプレーイングマネジャー化、組織のフラット化などによって、ミドルが1人ひとりの部下と相対できる時間が極めて少なくなった。今までは、いつも席に行けば上司が座っていたのが、お互いに忙しくなり、メールでアポイントメントをとらないと会えなくなってきた。また上司と同行するチャンスもめっきり減った。

また魅力的な上司が減ってきた。というか正確に言えば、部下にとって、上司が魅力的に見える場面が少なくなってきたのである。例えば、自分の経験をちょっと脚色して、ストーリーとして部下に伝えるという場面は、部下から見れば、未知の世界への誘いであり、そこからその上司の背中を見たいと思う意欲が高まることもある。だが、私が見る限り、上司が部下に自分の成功物語を話して、部下が眼を輝かして聞く、というような機会が減ってきたように思う。

さらに、上司が部下にチャレンジする背中を見せる場面が少なくなっていることもある。厳しい業績管理のもとで、上司はチャレンジをせず、ただ忙しく目標を達成する姿だけが見られるようになってきたのかもしれない。いずれにしても、上司が部下に魅力的に振る舞える機会が減ってきた。部下にしてみれば、仕事を楽しんでいるように見えない上司の背中を見る意欲はわかないだろう。

もう1つが試行する機会の減少である。上述したように人はミドルに育つまでに、先輩や上司のやり方をまねて、自ら「ミニ実践」を行うことが学習の観点からは重要である。

だが、ここで考えておかないとならないのは、ミニ実践がきちんとできるためには、職場にリスクを受け入れる余裕が必要なことである。学習途上にある若手に、「やらせてみる」余裕である。