プロジェクト開始から発売まで「たった1年」のスピード感

清涼飲料の王者である日本コカ・コーラは、「ホワイトスペース」と呼ぶ新市場の開拓に力を入れる方針を立て、そのために企画・開発・販売における速度を重視している。これは、初めは商品を販売する地域や店舗を絞り、市場の反応を確かめたうえで、段階的にブランドとして大きく育てていくもので、まさにスモールスタートと言える。

すぐに飲めるRTD(Ready To Drink)市場が成長を続ける中、そこで最も人気が高く、競争の激しいレモンサワーをあえて選び、最後発ブランドとして名乗りをあげる形で檸檬堂はスタートした。檸檬堂は、日本だけでなく、世界全体のコカ・コーラ社にとって初めてのアルコール飲料になったが、その開発は、プロジェクトの開始から発売まで1年間という、同社として異例の速度で果敢に進められた。

お酒に厳しい「九州」で先行発売

檸檬堂は、こだわりを持った30代から40代の低アルコール飲料を好む消費者がターゲットで、「こだわりのレモンサワーを出すお店」をコンセプトに、居酒屋で味わえる「こだわりのクラフトレモンサワー」を缶で楽しめるという価値を追求する商品として開発された。商品の真価を測るため、もともと焼酎文化が強く、お酒に対する評価がシビアな九州で限定発売して、お酒好きに認められるかどうかが試された。

上から見た福岡の街並み
写真=iStock.com/Sean Pavone
※写真はイメージです

2018年5月に地域限定で発売すると、丸ごとすりおろしたレモンをお酒に漬け込む「前割り製法」の新しいおいしさが支持を集めた。「少し贅沢な家飲みを楽しめる」と評判を呼んで飛躍的に売上を伸ばし、九州におけるレモン缶チューハイ市場でトップを握るまでになった。季節変動を見るために1年ほど売れ行きの推移を見た後、2019年10月に全国販売に踏み切った。

2020年には、目標としていた年間500万ケースの販売目標を大きく上回る約790万ケースの販売に成功している。商品展開も、定番レモン、鬼レモン、はちみつレモン、無糖レモンなどに拡大した。それぞれアルコール度数と果汁率を変えて、飲む人の繊細なニーズに合わせたラインナップが好評を博し、いまやレモンサワーのトップブランドとして定着している。