江崎グリコの「セブンティーンアイス」は、最初は専用のショーケースで販売されていた。だが、売上が思うように伸びなかったことから、自動販売機での販売を開始した。高千穂大学の永井竜之介准教授は「売り方の変更によって商品が生まれ変わり、ヒットを実現した事例だ」という――。

マーケティングとは「広める仕掛け作り」である

マーケティングにはさまざまな定義があるが、一言で表すなら「広める仕掛け作り」が分かりやすい。商品(製品・サービス)の開発やデザイン、広告やプロモーション、販売やアフターサービスなど、すべては商品を狙い通りに広める仕掛けを作るための活動と言える。

ビジネスには「ただ1つの正解」があるわけではない。考え方と作り方次第で、無数の正解を生み出すことができる。その考え方と作り方に役立つ道具がマーケティングである。商品をターゲット顧客に広めるという「正解の決まっていない課題」に対して、いかにターゲットが喜んで選び、自ら買いたくなるような仕掛けを作れるかが重要になる。

ショッピングカートのあるスーパーマーケット
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この広める仕掛け作りにおいて、常に念頭に置いておくべきことが、「誰のどんなニーズを満たすか」である。ニーズとは「何かに満たされていない状態」であり、誰かの「もっとこうだったら良いのに」という心の声を探し、見つけて、満たしてあげる。あるいは、新しいニーズを創る商品を提案することで、「確かに言われてみれば、これがあるとすごく良い」と気付かせ、その新しいニーズを満たしてあげる。

良い商品でも「売り方」が悪ければヒットしない

「良い商品のはずなのに売れない」という壁にぶつかったときには、商品そのものに問題を探してしまいがちになる。そうして「もっと良い商品を」と開発のアップデートを追求するあまり、ニーズを通り越してしまい、「過剰品質」と批判されるような失敗に陥りやすい。

そうではなく、売れない原因が「売り方」にある可能性について、もっとよく検討すべきだ。良い商品を開発できれば、自然にヒットしてくれるわけではない。適切なターゲットの手にうまく届け、ニーズを満たせなければ、どんなに良い商品でも広まらない。商品を売る場所や方法を変えれば、新しいニーズに出会うことができる。商品が売り方の変更によって生まれ変わり、起死回生のヒットを実現した3つの事例について紹介しよう。