ビジネスに正解はないが正攻法はある
現在世にあるビジネス本というのは主に2種類である。ビジネススクールで生み出された大企業経営向けか、ベンチャービジネスの大成功者が書いた自叙伝に近いものである。
私はスモールビジネスを実践するにあたり、これをスモールビジネス向けに再度解釈する必要があった。
実践の過程ではさらに、多くの新しい考えを必要とした。そしてかなり苦労しながらであるが、実践を通じて成功率が高い方法論を学んできた。これらの経験を通じ、スモールビジネス向けた実践的な指針を、初心者でも取り組みやすいようにまとめたものが本書である。
スモールビジネスはベンチャービジネスとは目的が異なる。そのため、ベンチャー起業向けのビジネス本に書かれている内容とは異なる知識、メソッドが必要となる。例えば善とされるイノベーションはスモールビジネスにとって必要ではない。
社会や産業構造の変革を目指す必要もない。イノベーションが全てを救ってくれる、全員が目指すべきなどと考えてしまうのは極端な考えであり、安定着実なスモールビジネスにとっては害ですらある。
起業を考えるとついつい発信力が強いベンチャービジネスの考えに大きな影響を受けてしまいがちであるが、それは数としてはマイノリティでありハイリスクを許容し短期間で成長を目指すメソッドであると認識して欲しい。スモールビジネスにおいてそのメソッドは、決して確実な勝利を目指す方法ではない。
ビジネスには正解はないなどと言われることはあるが、正攻法はある。
幸運なことに、私は様々なビジネスの失敗と成功を見届ける立場にあったが、多くのビジネスが失敗するのは正攻法違反をしているからであると知った。私が過去失敗した事例を振り返っても、それはやはり焦りや人間関係の都合から正攻法をおろそかにしてしまったときであった。
是非本書に書かれている内容を実践して頂き、当然のように、再現性高く、楽に成功し安定着実なスモールビジネスを築いて欲しい。
安定した高収入と追求しがいの感じる仕事を与えてくれる
本書で目指すスモールビジネスとは以下のものと定義する
・事業価値の最大最速成長よりも安定着実を重視し、関係者に対して利益をもたらす
・売上は100億円以下を目安とする
・自由度を重視し、オーナーの生き方を制約しないように、自己資本での運営を基本とする
我々はどう生きるべきか。これは非常に難しい問いであるが平易な表現を敢えて使えば、多くの人が以下については同意するのではないだろうか。
・仕事だけに留まらず充実したプライベートを過ごしたい
・共通の価値観を持ち、時間・精神的に余裕のある友人と過ごしたい
・自分ならではの独自性が欲しい
・追求しがいを感じる目標が欲しい
・気の合わない人間とは付き合いたくない。対人関係のストレスを避けたい
これらは全てスモールビジネスが与えてくれる。
一方で、言うまでもなく、企業の勤め人としてこれらを手に入れるのは難しい傾向にある。時間的な余裕や安定した高収入、そして追求しがいを感じる目標のある状態を、生涯保証してくれる企業が増加していくとは考えられない。
2022年4月現在は新型コロナウイルスの影響もあり、この傾向は更に加速している。
では、ベンチャー起業はどうだろうか。高いリスクを取る分、大きなリターンを期待出来る。資金調達環境や起業に関するノウハウもこの10年程で大幅に改善した。ただしその一方で、強いプレッシャーに晒されながら生活は避けられず、それでいて成功率も決して高くはない。
そう考えると、高いリスクや強いプレッシャーを許容してでも実現したいことがある人には向いているが、万人向けの選択肢ではない。
それではどこに救いがあるのか。そこで推奨したい有力なオプションの1つがスモールビジネスである。