「少数の人しか持っていないだろうが強いニーズ」を見つける

さて、最初にスモールビジネス適しているビジネスの基本条件から考えてみよう。自分が考えているアイデアがこの条件に適合しない場合、黄色信号だと思って欲しい。

基本条件1.課題自体に多くの人が気付きづらい

ビジネスが生み出される基本フローは

課題に気づく
解決策を考える
実行する

である。

「実行する」をしてしまう人数が競合の人数になる。競合の数は必ずしも市場規模とは比例しない。何故ならビジネスに取り組む人は全員が全員、冷静に取り組んだ際の旨味を計算し参入するわけではないからだ。殆どの参入者は流行やその場の雰囲気で参入を意思決定する。

そのため、多くの人の目に触れるような気付かれやすい課題は、必然的に参入者が過剰になる。勿論「多くの人が課題を感じる=大きな市場が期待出来る」ということであるが、少ない投資で勝利まで駆け抜け、かつ安定的に稼ぐにことは、非常に難しい市場と言える。

スモールビジネスにおいては、そもそも課題が存在することすら一般人には知られていない課題に取り組むことを推奨する

こう考えると、自分が一般的な消費者として感じた課題を解決するというアプローチはその時点で筋が悪い。多くの飲食、小売店が苦しんでいるのは常に過剰な参入者に晒されているからと考えることも出来る。

自分が普通に生活しながら発見した課題については、最初から警戒すべきである。逆に、仕事を通じて「少数の人しか持っていないと思われる強いニーズ」を発見したなら、それは宝の可能性がある。常にそのようなニーズを血眼で探すとよいだろう。

誰かが不満を述べている、一般的には見られない特殊な行動を取っている(不愉快だがそうせざるを得ない)という事象には常に注目し、何故その事象が発生しているかの背景を考えるべきである。

属人性はスモールビジネスの味方

基本条件2.自分の趣味、経験があるからこそ出来ること

「目立たないが深刻である課題」を発見出来たとしよう。同じ課題に取り組む競合と比較し、何故限定的な量しか投資出来ないスモールビジネスオーナーである自分の提案が選ばれるのか。その優位性を担保するのは、特にスモールビジネスの場合は自分の能力である。

自分の能力とは今までの趣味もしくは仕事を通じて身についていることが多いだろう。自分だけにしか出来ないことなどと大げさに捉える必要はないが、一般人よりは自分が上手く出来そうな内容に絞り込んだほうがよい。

一方「好きなことを仕事にしなさい」と安易に言っているのではない。この考えを文字通り受け取ってしまうと失敗へと一直線となる。趣味から考えるビジネスの危険性については本書の別の項目で詳しく解説する。

基本条件3.属人性がある

一般にはスケール(拡大)しづらいという観点でビジネスの敵とされる属人性であるが、スモールビジネスにとっては味方である。そもそもスケールすることを目指していないからである。属人性が強いビジネスであることは素晴らしい。

属人性があるからこそ、大企業やベンチャーはスケール出来ず参入しづらいのだ。ただ、スモールビジネスが全く拡大しないかというとそんなことはなく、自分1人で売上を十分に立てることが出来るようになれば、属人性を低下させるために投資を行い、自分の業務量を徐々に減らすことも出来る。

属人性があるビジネスのため、当然、一定規模以上にスケールさせようとすると苦労するだろう。しかし、スモールビジネスを目標地点としているのならこれでよいのだ。