階級を可視化する「制服」という存在
そもそも自衛隊は、幕僚長をトップに据えたピラミッド型の階層が極めて明確な組織です。最近は、階層を少なくして風通しを良くする組織への転換が強調されるようになっています。
2014年にフレデリック・ラルーが提唱し注目された「ティール組織」では、階層に頼らずに個人が自身の判断で自主的に動くことを期待しており、業務指示を出す上司の存在を前提としていません。このような「進化型」といわれる組織と自衛隊の組織構造は正反対にあります。自衛隊の組織は時代遅れの組織なのでしょうか。
まず、自衛官の階級は16あり、制服に装着する階級章で判断することができます。自衛官には制服着用の義務があり、部隊ではない幕僚監部勤務であっても、勤務時間中は制服を着ることが求められています。
「制服を着たときは、自衛官だって誇りを持っていることが一番大切なのではないかなと思います。制服を着ることによって、スイッチが入るところもあるんですよね」
この発言にあるように、階級を可視化することが、仕事モードに切り替わる一つのスイッチとして働くという側面もあるようです。
上官の命令に服従することは法律上の義務
16の階級というのは普通の組織に比べてかなり多いのですが、上司と部下の関係も民間企業の上司―部下関係とはかなり隔たりがあるようです。自衛隊組織の特性上、自衛隊法には、上官の命令に服従する義務が定められています。これは、一般職の国家公務員も同様ですが、自衛官はこの意味するところを、日々の任務を通じて実感しているに違いありません。
「国を守らなくてはいけないという任務に就いているからこそ、自らの身を律しておかないと、国防という任務に対応できないと思うので、他の公務員以上に、きちんとあるべきという目線で国民から見られるんだと思っています。
例えば、一人でも不祥事を起こしてしまうと『自衛隊は何をしてるのか』と非難されるし、そういうことで国民の信頼を失ってしまうと国防を担う組織が信頼されなくなってしまう。そういう意味で他の公務員よりは、規律が強く求められるのだと思っています」