ウクライナの首都・キエフのクリチコ市長は、ボクシングの元世界王者というユニークな経歴がある。どんな人物なのか。ノンフィクション作家の細田昌志さんは「市長である兄だけでなく、弟も元世界王者で、『史上初兄弟同時世界ヘビー級王者』という偉業を成し遂げている。ボクシング界で知らない人はいない」という――。
「世界最強のクリチコ兄弟」のすごすぎる記録
いまだ収束の見えないロシアのウクライナ侵攻。そんな中、首都キエフのビタリ・クリチコ市長の経歴に注目が集まっている。
2014年に市長に当選。以降8年間、大統領のゼレンスキーと並ぶ「反ロシア」「親EU」の代表的な要人なのだが、その一方で「世界最強のクリチコ兄弟」の兄でもあるからだ。
市長である兄のビタリ・クリチコはプロボクサーとしてWBC、WBOの2団体で世界ヘビー級王座を獲得し、実弟のウラジミール・クリチコも、WBA、IBF、WBOの3団体の統一世界ヘビー級王座を獲得している。
2008年からの4年間は、兄がWBC、弟がWBA、IBF、WBOと兄弟ですべてのメジャータイトルを独占。「史上初兄弟同時世界ヘビー級王者」という偉業を成し遂げているのだ。
真っ先にロシアと戦う意志を表明
ウクライナ侵攻が起きた際、ビタリはイギリスのテレビ番組「グッドモーニング・ブリテン」の取材に応じ、次のように述べた。
「すでに血が流れている。やるしかない。俺は戦う」
まさにこれは、通算12度の世界王座防衛をはたしたビタリ・クリチコによる“祖国防衛宣言”にほかならなかった。これに呼応するかのように、弟のウラジミール・クリチコも自身のSNSを通じ「徹底抗戦」を表明。
同じくウクライナの世界的ボクサーで、フェザー、スーパーフェザー、ライトの3階級の世界王者に君臨したワシル・ロマチェンコも自身のSNSに軍服姿の写真を投稿し、領土防衛隊に入隊、ロシア軍と戦うことを明らかにした。
さらに、現WBAスーパー、IBF、WBO世界ヘビー級統一王者で、ウクライナ出身のオレクサンドル・ウシクも、滞在先のイギリスから帰国し、銃を取って戦うことを言明している。