アルバイト先に就職する気でいたら…

当時の私はバイト先の重役に身の上相談に乗ってもらうほど、就職先を決めあぐねていました。大志はあるものの、平凡な大学生の1人だったのです。

22歳、大学4年生となった私は、周りが就職活動を始めても、どこ吹く風。オックスでのアルバイトに励んでいました。「このまま入社してもいい」、そんな思いも少なからずありました。そんな時期、オックスの渡辺義孝専務(現ヒューマンクレスト代表取締役)に就職先について相談させてもらったことがあります。

渡辺専務は、バイトに必死に取り組んでいた私に、特に目をかけてくださいました。

そのため、「就職活動なんかせず、うちに入社しなさい」と言われる気がしていたのですが、予想は大外れ。「うちの会社に来てくれたらうれしいが、ほかの会社も見て決めるのがいい」とおっしゃったのです。

今考えると、渡辺専務はオックスの経営陣の不協和音を感じていて、私に入社をすすめなかったのだとも思えます(後にオックスで内紛が起こり、渡辺専務は解任されます)。一介のアルバイトである私の将来を真剣に考え、親身に助言してくださったことについて、今でも渡辺専務に感謝をしています。

土日祝もGWも夏休みも「とにかく働きたい」

私は『日経ビジネス』の記事で興味を持った会社に電話をかけるなど、ベンチャー企業を中心に会社を探しました。そして、自宅に送られてきたDMで人材関連企業の「インテリジェンス」(現パーソルキャリア)を知り、新卒採用のセミナーに参加。

「当社は89年に創業し、急拡大してきました。人材派遣業に参入してまだ2年目ですが、将来はパソナを、そしてリクルートを抜き去ることになるでしょう」

宇野康秀社長(現USEN-NEXT HOLDINGS代表取締役社長CEO)のこのような話に胸を熱くして、入社を決めます。宇野社長の眼差しに純粋さや真剣さを感じたからです。「将来すごい会社を創る」という自分の目標を共有できる気がしました。

日本では、何かに情熱を注いだり、上昇志向を抱いたりすることを恥ずかしいと捉える風潮があります。でも、宇野社長の下でなら、思いっきり働ける気がしたのです。

そして1997年4月。インテリジェンスに入社後は、ハードワークに徹しました。同社は当時、「深夜まで働くのが当然」という社風でした。最初から猛烈に働きたかった私にとっては素晴らしい環境です。私も毎日終電ギリギリまで働き、土日も祝日もゴールデンウィークも夏休みも返上。文字通り「1日も休まず」働きました。