マックを買い込んで、向かった先は…
「学校でどんなことをしてみたい?」
この質問に、鎌倉市立由比ガ浜中学校の生徒たちから返ってきたのは、「学校に泊まりたい!」という声だった。
宿泊学習当日、生徒たちの要望でゲーム大会が行われた。夜には近隣でそれぞれ買った夕食を生徒たちは学校へ持ち寄った。多くの子がマクドナルドを選び、それを友達と笑いながら食べる。夜は布団を並べて夜遅くまでおしゃべりをした。スタッフたち(当校では教職員を「スタッフ」と呼ぶ)はそれらを見て、「せっかくだから、もっと特別な体験をしては?」とも思ったという。
しかし、これまでクラスメイトと出かけた経験がほとんどない生徒たちは「いっぱい思い出ができた! 修学旅行みたいだった!」と目を輝かせた。
友達と“ふつう”に過ごす。これが由比ガ浜中学校の生徒たちの求めたこと。大人はさまざまなお膳立てをしたくなる。しかし、不登校で友達と過ごす経験が少なかった生徒たちにとって、仲間と当たり前に過ごす日常こそが心から求めているものだった。
不登校生徒の8割が登校するようになる学校
江ノ島電鉄由比ヶ浜駅から徒歩2分。江ノ電が校舎の前を通り抜ける。電車好きの生徒はその様子を2階の窓から飽きもせずに眺めているという。ここは鎌倉市立由比ガ浜中学校。鎌倉市内全域から、不登校を経験した生徒たちが通ってくる「学びの多様化学校」だ。
学びの多様化学校とは、不登校やその傾向にある児童・生徒のために設置され、文科省から特別な教育課程編成が認められている学校のことだ。授業時数は一般的な学校と比べ25%ほど少ない。また、由比ガ浜中学校では、起立性調節障害など朝の起床困難などを抱える生徒たちにも配慮し、登校時間を午前9時30分と設定している。
定員30名程度のところ、2026年度の生徒数は34人。昨年度14人が卒業して、今年18人が入学してきた。その全員が小学校や中学校で不登校を経験した生徒だ。小学校6年間のほとんど登校しなかった生徒もいれば、週1、2回ほど欠席していた生徒もいる(文科省は年間30日以上欠席している児童・生徒を不登校と定義している)。しかし、由比ガ浜中学校に入学や転入をすると、彼らの8割以上が登校するようになる。
生徒から「リーダー」の愛称で呼ばれる分校長の岩田明先生は、「休みたいときはすすんでしっかり休もう」と生徒に伝えている。さらに「登校率を上げることを目標にもしていません」とも続ける。
それなのに――。
多くの生徒は由比ガ浜中学校に来ることを選択する。


