「うちの子はひきこもりになっていたと思う」
「この学校がなかったら、うちの子はひきこもりになっていたと思います」
由比ガ浜中学校にはこう話をする保護者も少なくない。不登校になって追い詰められているのは子どもだけではない。親もまた自問したり不安になったりという日々を過ごすことも多い。
そこで同校では保護者同士が話をする保護者トーク会(懇談会)を毎月開催している。保護者同士で本音を話し合うことが、ガス抜きになる。また、子どもが学校に通い始められるようになると、保護者の悩みも変容していくと岩田分校長は言う。
「安定して登校できるようになると、『うちの子、全然家で勉強をしないんですが、成績は大丈夫ですか』『高校進学を頑張らせたいです』といった心配を抱く保護者も出てきます。トーク会では、こうした焦りを共有したり、ときには先輩保護者の話を聞いて落ち着いたりと、生徒だけでなく保護者も葛藤をひとりで抱えこみすぎないことをとても大事にしています」
また、保護者が参加する「由比中サポーターズ」があり、クリスマス会を企画したり校外学習のサポートをしたりと保護者が主体的に学校に関わる。由比ガ浜中学校は保護者にとっても大事な居場所となっている。
不登校でも、友達が殻を破いてくれた
2026年3月、1期生14人が卒業した。生徒たち自身で選んだ進路は、全日制の公立・私立高校や通信制高校、サポート校、さらには海外留学など多岐にわたる。
その卒業生のうちの一人。1年間ほぼカウンセリングルームに登校し続けた生徒は、学校に来て毎日小説を書いていた。「小説を書くこと自体は自宅でもできますよね。しかし、わざわざ登校して、スタッフとコミュニケーションをとりながら執筆していたのは、『自分で決めたことを貫きたい』『人とつながりながら、がんばりたい』という思いがあったからこそだと思うんです」と岩田分校長。最終的には上下巻合わせて600ページ以上の大作が仕上がったという。
当初、「卒業式もカウンセリングルームで過ごす」と言っていた彼女だったが、最終的にはスタッフ全員と来賓がいる前で卒業証書を受け取った。さらに、お別れ会の最中、ひとりの生徒がピザをもって彼女の過ごすカウンセリングルームを訪れ、おしゃべりをしながら食事をした。共通の趣味があった2人はどこかのタイミングでそれを知り、連絡先を交換して、最後の最後で直接話をしたのだった。
「スタッフは『ピザを持っていって』なんて一言も言っていません。2人はいつの間にか仲良くなり、知らぬ間に彼女の殻が破られていた。友達とは大きな変化をもたらしてくれる、本当に偉大な存在ですね」(岩田分校長)


