「インフィニティ国際学院」は、世界を旅するオルタナティブスクールとして2019年に高等部が開校した。2022年には北海道を拠点する中等部が開校、学費は年間480万円超と高額だが、全校生徒の97%が道外から入学を決めている。生徒たちはここでどんなことを学んでいるのか。教育ライターの佐藤智さんが密着した――。

「先生」がいない不思議な学校

北海道の上川駅に降り立ち、大雪山の麓にある景勝地・層雲峡に向かう。柱状節理でできた岩々がそびえ立つ道を抜け、層雲峡温泉に辿り着くと、世界を旅しながら体験から学ぶ学校「インフィニティ国際学院」がある。

ホテルをリノベーションしたキャンパス。2025年度からは上川駅からほど近い「上川ファミリーオートキャンプ場」の敷地内に電力を自給自足する「オフグリッド」を目指すエコキャンパスが新設されるという。移転先は、湧水が流れ、広々とした青空が広がる土地だ。キャンパスの中に入ると、サークルになって中高生が一緒になって対話をしている。

全員私服で、横並び。一見したところは、誰が大人で、誰が生徒なのかわからない。異年齢の生徒たちのはずだが、みんなが下の名前で呼び合い、大人も「イトケン」「タコ」「ナツコ」などの愛称で呼ばれている。聞けば、ここに「先生」はいないのだそう。大人は「チューター(伴走者)」であり、生徒たちの課題に寄り添い、コーチングや議論の進行役を担う存在だ。

異年齢でサークルになって学び合う
筆者撮影
異年齢でサークルになって学び合う

1年の大半を「日本と世界を旅して学ぶ」

インフィニティ国際学院は教室を飛び出し、学びの旅に出ることをコンセプトにした初等部・中等部・高等部を持つ学院だ。

「世界で学ぶ」をコンセプトとし、中等部は上川町と鹿児島県の奄美大島のキャンパスを行き来し、地域に溶け込みながら寮生活をおくる。高等部は日本と海外、世界各地のフィールドで“生きた教材”から直接学び、自ら考え決定し行動するための力を養っていく。

提供=インフィニティ国際学院
鹿児島県の奄美大島キャンパスでは思い切り南国の離島を肌で感じる

創設者で学院長の大谷真樹さんは、「本物に出会って五感で捉えて学ぶことを重視しています。今の時代、情報はインターネットでいくらでも拾えますが、そこに“本物感”はありません。現場に行って、『本物に接して、本物から聞いて、本物を体験すること』で自分ごとになっていく。そこにインフィニティ国際学院の価値があります」と語る。

入学式を終えたばかりの時期。キャンパスには中学生も高校生もそろっているタイミングだった。高校生がこの場所で過ごすのは10日間程度。その後は、和歌山に旅立ち、その足でニュージーランドへ飛び立つ。

2019年に高等部を、2022年に初等部と中等部を開校。コロナ禍をはさみ、一時は当校の醍醐味である旅に出られない時期もあったが、現在、生徒たちは協同生活をしながら国内にとどまらずアジアやヨーロッパを転々と旅しながら暮らし、学んでいる。