「先生」がいない不思議な学校
北海道の上川駅に降り立ち、大雪山の麓にある景勝地・層雲峡に向かう。柱状節理でできた岩々がそびえ立つ道を抜け、層雲峡温泉に辿り着くと、世界を旅しながら体験から学ぶ学校「インフィニティ国際学院」がある。
ホテルをリノベーションしたキャンパス。2025年度からは上川駅からほど近い「上川ファミリーオートキャンプ場」の敷地内に電力を自給自足する「オフグリッド」を目指すエコキャンパスが新設されるという。移転先は、湧水が流れ、広々とした青空が広がる土地だ。キャンパスの中に入ると、サークルになって中高生が一緒になって対話をしている。
全員私服で、横並び。一見したところは、誰が大人で、誰が生徒なのかわからない。異年齢の生徒たちのはずだが、みんなが下の名前で呼び合い、大人も「イトケン」「タコ」「ナツコ」などの愛称で呼ばれている。聞けば、ここに「先生」はいないのだそう。大人は「チューター(伴走者)」であり、生徒たちの課題に寄り添い、コーチングや議論の進行役を担う存在だ。
1年の大半を「日本と世界を旅して学ぶ」
インフィニティ国際学院は教室を飛び出し、学びの旅に出ることをコンセプトにした初等部・中等部・高等部を持つ学院だ。
「世界で学ぶ」をコンセプトとし、中等部は上川町と鹿児島県の奄美大島のキャンパスを行き来し、地域に溶け込みながら寮生活をおくる。高等部は日本と海外、世界各地のフィールドで“生きた教材”から直接学び、自ら考え決定し行動するための力を養っていく。
創設者で学院長の大谷真樹さんは、「本物に出会って五感で捉えて学ぶことを重視しています。今の時代、情報はインターネットでいくらでも拾えますが、そこに“本物感”はありません。現場に行って、『本物に接して、本物から聞いて、本物を体験すること』で自分ごとになっていく。そこにインフィニティ国際学院の価値があります」と語る。
入学式を終えたばかりの時期。キャンパスには中学生も高校生も揃っているタイミングだった。高校生がこの場所で過ごすのは10日間程度。その後は、和歌山に旅立ち、その足でニュージーランドへ飛び立つ。
2019年に高等部を、2022年に初等部と中等部を開校。コロナ禍をはさみ、一時は当校の醍醐味である旅に出られない時期もあったが、現在、生徒たちは協同生活をしながら国内にとどまらずアジアやヨーロッパを転々と旅しながら暮らし、学んでいる。