生徒たちのために「そろえる」を手放した

どんどん書き進める生徒もいる一方で、なかなか筆が進まない子も多い。「計画をたてて行動したくない」「今日は考えられない」とスタッフに伝える生徒もいる。また、学力層も広く、なかには小学校1年生から不登校になり、自分の名前を漢字で書くことが難しい子もいるという。こうした生徒と向き合うには、「そろえる」を手放し、個々のペースでひとつひとつ学びを積み重ねていく姿勢が重要になる。

「一般的には、3年生になったら3年生の数学の授業を受けて理解させなければいけないと思いがちです。しかし、本校にはそもそも学びの楽しさを知らない、経験したことがない子どもがとても多い。好きでなければ何事も続きません。であれば、学年ごとに進度を揃えることよりも、まずは『学びが楽しい』と体験することや、学び直す機会が用意されていることのほうがずっと大事だと思うのです」

また、生徒の様子を見て、スタッフが時間割を協議することもあるという。「数学と英語が重なった日は生徒たちがプレッシャーを感じやすい」「午前中に精神的負荷が大きい教科がある日は生徒のコンディションが悪そうだ」といった気づきをシェアし、時間割を見直していく。

「そろえない」学校での「成績」は?

多様な状況の生徒たちを数値で一律に評価していくことは難しい。自己肯定感が低い生徒にとっては、「どんな変化があったか」や「どんな思いを持ったか」「どんな学びができたか」という定性評価(文章評価)がより一層大事になると岩田分校長は語る。そうした質的な変化の様子は生徒とスタッフとの日々の対話の中でにじみ出していく。スタッフはその変化を見取り、言葉で承認する。

「文章評価は学びのあしあとを残していくことだ」と岩田分校長は言う。「学びのあしあと」は全員に、いわゆる一般的な成績評価(評価・評定)は面談をした上で希望者のみに伝えている。

「ただでさえ、小学校から中学校になると評価の方法が変わり落ち込む生徒が出てきやすくなります。本校に通う生徒たちはプレッシャーや緊張感を感じやすい状態にある子が多い。評価を受けることでプラスに働けばいいのですが、描いている自分自身とのギャップを痛感し、前向きな気持ちを失ってしまうこともあるでしょう。

ただ、中学校という位置付け上、生徒も保護者も高校への進路を考えます。高校進学を意識すると、中学校での評価がどうしても気になってくる。そのため、希望者のみに成績を渡すこととしました」(岩田分校長)