※本稿は、本郷和人『カラー版 皇室のお宝』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
秀吉自ら設計に関わった
京都には皇室と結びつきが深い寺社が数多くありますが、伽藍や仏像はもちろん、庭園の美しさにも目を見張るものがあります。なかでも僕が面白いと感じるのは、醍醐寺の塔頭・三宝院の境内に設けられた庭園です。
この庭園は天下人となった豊臣秀吉が1598年に行った「醍醐の花見」に際して自ら設計に関わったことでも知られ、皇族や公家を招いて文化交流を行う場でもありました。庭を望む表書院は国宝に、庭園自体も国の特別史跡・特別名勝にそれぞれ指定されています。この庭をじっくりと眺めてみてください。どこか、いかにも秀吉らしい、華やかで過剰なサービス精神のような要素が感じられないでしょうか。その独特の魅力を、掘り下げていくことにしましょう。
豪華で、過剰で、でもどこか楽しい
秀吉という人は、自らの権力をどう演出するかに心血を注いだ人物でした。《醍醐寺三宝院庭園》は、その演出感覚がそのまま設計に投影されたものといってよいでしょう。各地から取り寄せた名石を配し、池を造り、橋を架け、視線の先々に見せ場を作る。池を中心に舟で周遊できる回遊式庭園でありながら、同時に枯山水的な要素も入っている。普通ならどちらかに寄せたほうがスッキリします。静かに座って幽玄の美を愉しむのか、それとも動き回って四季の移り変わりを愛でるのか。
ところが秀吉は、そのベクトルの違う二つの要素を一つの庭に入れ込んでしまったのです。正直に言えば、その過剰さが少し成金臭さとして感じられなくもない。けれども、その「ちょっとやりすぎじゃないか」という感じも含めて、これこそが秀吉の魅力なのではないでしょうか。豪華で、過剰で、でもどこか楽しい。自分が楽しむだけではなく、来た人にも「どうだ、すごいだろう」と見せびらかしたい。その秀吉ならではのもてなしの感覚が、この庭にはよく表れているような気がするのです。

