事実と異なる字幕でNHKが再び大炎上

NHKが2021年12月26日に放送したドキュメンタリー番組「BS1スペシャル・河瀬直美が見つめた東京五輪」で、番組に登場した男性を「五輪反対デモにお金をもらって参加した」という趣旨の字幕をつけて紹介したが、まったくの事実誤認と判明、「捏造ねつぞう疑惑」が一気に浮上した。

五輪開催の是非をめぐって世論が二分された中で、反対運動を愚弄するセンシティブな問題だけに、「字幕事件」をめぐる真相究明はドロ沼の様相を呈している。

「捏造疑惑」を必死になって否定するNHKの釈明は二転三転し、「みなさまのNHK」の信用はガタ落ち。放送番組・倫理向上委員会(BPO)も乗り出し、歴史的な一大不祥事に発展しつつある。

もっとも、コロナ禍の中で菅義偉・前政権が決行した五輪を全面支援したNHKが、一時であれ反対運動に水を差したことは、「政府のお抱え放送局」の面目を大いに施したようにみえる……。

NHKの「捏造疑惑」といえば、2014年に「クローズアップ現代」の「出家詐欺」をめぐる「やらせ事件」が記憶に新しい。

同時に、東京MXテレビが17年に起こした情報バラエティー番組「ニュース女子」の「沖縄米軍基地反対運動」をめぐる「捏造疑惑」も思い浮かぶ。

放送番組の「捏造」や「やらせ」の問題は後を絶たないが、今回の「字幕事件」は、NHKのみならず放送界全体に番組制作のあり方をあらためて問いかけている。

話してもいない言葉が字幕に入った

まずは、問題になった番組と経緯を振り返ってみる。

「BS1スペシャル・河瀬直美が見つめた東京五輪」は、今夏に公開が予定されている2020東京五輪の公式記録映画の総監督を務める河瀨直美さんに密着取材し、東京五輪をさまざまな視点から見つめようという企画の番組だ。

問題のシーンは、公式記録映画スタッフの映画監督の島田角栄さんが五輪反対派の声を集める中で出会った匿名の男性のインタビュー。そのとき、男性が話したわけでもないのに、「五輪反対デモに参加している」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」というキーワードが字幕で入った。

つまり、「五輪反対デモは、カネによって動員されていた」というのである。