テレビ局には番組を制作するディレクターの補助をする「AD(アシスタント・ディレクター)」という職種がある。元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道さんは「これまでADは長時間労働が当然視されてきた。だが、派遣会社のADが増えたことで、その扱いも大きく変わりつつある」という――。
放送開始のタイミングをハンドサインで送るカメラマン
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雑用、長時間労働…変わりつつあるADの働き方

「AD」と言えば雑用や長時間労働のイメージを思い描く人は多い。1月14日の「東スポweb」によると、「AD(アシスタント・ディレクター)」という呼称を廃止する動きが出ているという。

呼称を変えることで、イメージの刷新を図り、テレビ局内の意識を変える狙いがあるという。日本テレビは、「YD(ヤング・ディレクター)」と呼ぶことになっているそうだ。

「呼び方を変えても実態が変わらなければ全く意味がない」という指摘は確かにその通りだろう。もし日本テレビが「呼び名を変えるだけ」ではなく、実態も変えるのであれば、あながち「YD」は悪くないかもしれないな、と私は思う。

本当の問題は、「局員」とそれ以外の「下請けの制作会社」社員との圧倒的な待遇格差だと思う。ADの呼称変更はこの問題の表層にすぎないと考えている。

ADの一般的なイメージとは異なり、テレビ業界でいま一番優遇されているのは、ある意味「AD」だと言っても間違いではない。それはなぜか?

びっくりするほど人手不足だからである。

どの番組の制作現場でもだいたいADの取り合いになっている。その結果ADが一番「気を遣われている」と思う。ある意味「腫れ物に触る」ような感じで扱われているとすら感じる。なぜか? それにはいくつかの理由がある。