ギスギスした職場を改善するにはどんな方法があるでしょうか。350以上の企業や官公庁などで組織変革支援を行ってきた沢渡あまねさんは「職場がギスギスしている原因の一つに、暑い、寒い、うるさい、暗いなど、物理的な職場環境の悪さがある」といいます――。(第2回/全3回)

※本稿は、沢渡あまね『なぜ、日本の職場は世界一ギスギスしているのか』(SB新書)の一部を再編集したものです。

温度計と暑い室内で働くビジネスマン
写真=iStock.com/AndreyPopov
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パフォーマンスやモチベーションに影響

物理的な職場環境の悪さも職場の雰囲気をギスギスさせます。具体的には、以下のような環境が挙げられます。

・換気がされておらず空気が悪い
・温度調整ができておらず暑すぎたり寒すぎたりする
・音がうるさい
・照明が暗い

生産現場などでは冷房設備の代わりに大型の扇風機などを回しているところもありますが、日本のように夏が酷い高温多湿になる場合、暑さは仕事の能率を下げるだけでなく、働く人が熱中症になる危険性もあります。

ある企業の経営者が「人に優しく、人に易しいものづくりを目指したい」と話していました。「人に易しい」は、余計な調整などをなくし、標準作業を整備することで難しい仕事をできるだけ易しくするといった意味です。もう一つの「人に優しく」は、たとえば重いものを運ぶといった男性社員にしかできない仕事をなくしたり、できるだけ静かで明るい環境にしたりして、年齢や性別に関係なく誰もがいきいきと働ける環境にすることです。

職場の暑い寒いやうるさい、暗いなどは、働く人のパフォーマンスに影響します。「この職場は自分たちをモノとしか見ていないんじゃないか」とモチベーションの低下にもつながります。

工場や営業所の環境は悪いのに、本社は快適

当然、健康にもよくありません。そのような職場でプロとしてモチベーションを上げて働くのはおよそ不可能です。

特に気をつけたいのが、工場や営業所の職場環境は悪いにもかかわらず、本社はとても居心地のいい職場になっているケース。

ある企業の工場の隣には、立派な本社ビルが建っていました。工場で働く人たちがよく口にしていたのが、「本社の人間はあのビルの上で食事をしながら自分たちを見下ろしている」といった不満でした。あるいは、本社ビルの人間が工場に足を運ぶことは滅多になく、何かあると工場の人間を本社に呼びつけていましたが、それについても「彼ら/彼女たちはクーラーの効いた部屋から一歩も出ようとしない」と言われていました(だからといって、工場の現場と不公平だから、本社の環境改善には一切投資しないのは悪手です)。

職場環境の悪さはパフォーマンスやモチベーションの低下を招き、働く人の気持ちをギスギスさせます。改善の投資をしましょう。