重点措置の発動要請までは、当然の流れだった
新型コロナウイルスの変異型、オミクロン株の急激な感染拡大で、「まん延防止等重点措置(以下、重点措置)」の対象地域が1月27日から34都道府県に拡大された。これまでのデルタ株に比べて感染力が格段に強い一方で、若年層を中心とした感染者の間では重症化する人が少なく、無症状者も多い。知らず知らずのうちに感染し、接触者に無意識のまま感染を広げているケースが多いと見られている。
東京都では1日の感染確認者が1月22日に初めて1万人を突破、1月26日には1万4086人と過去最多を更新した。一方で、人工呼吸器かECMO(エクモ、体外式膜型人工肺)を使用している東京都の基準による「重症者数」はわずか18人に止まっている。
しかしながら、危機の度合いを測る指標の1つとして使われている「病床使用率」は1月26日時点で42.8%に達し、病床の逼迫が始まっている。感染確認者を入院させることで、急ピッチで病床が埋まっていっていることが背景にある。さらに、看護師などエッセンシャルワーカー(社会機能を担う職業従事者)が感染して自宅待機を余儀なくされるケースなどが相次ぎ、病床に余裕があっても人手不足で患者の受け入れができないという病院も出始めた。「重点措置」の発動を自治体が政府に要請するのはある意味、当然の流れだった。
どんな対策を採ればいいのかよく分からない
ところが、その重点措置の発令に伴って、われわれはどんな対策を採れば良いのか、なかなか分かりにくい状況になっている。デルタ株蔓延の際は「人流の抑制」が繰り返し呼びかけられ、外出自粛が求められた。大型のイベント会場の収容人員に上限を設ける措置も取られた。ところがである。
「オミクロン株の特徴にふさわしいめりはりのついた対策を打つ必要がある。人流抑制ではなく人数制限がキーワードだ」――。政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長の発言が波紋を呼んだ。1月19日に重点措置の対象拡大を了承した分科会の終了後に記者団に語ったもので、「ステイホームは必要ない。渋谷駅前の交差点がいくら混んでいてもほとんど感染しない」とも述べた。これまでの人流抑制から方針を転換したかのような口ぶりだった。
しかし分科会が了承している「基本的対処方針」には、「混雑した場所などへの外出自粛」が明記されている。「国と尾身氏で整合性を取ってほしい」(小池百合子東京都知事)などとの苦言が噴出したのは言うまでもない。