第7波、別の感染症が流行したら対応できるのか

「まったく別の病気に変わった感じだ」――陽性患者を診察している沖縄の医師の間からはそんな声も聞かれる。デルタ株までと違い肺炎を起こすケースが少ないというのだ。だが、一方で、首都圏で中規模病院を経営する院長は、「高齢者でかかった人の数が少なく、高齢者でも本当に重症化しないのか、まだエビデンスが足らない。何しろ猛烈な感染力であることは明らかなので、少人数でも会食はやめるべきだ。酒のあるなしは関係ない」と慎重姿勢を崩さない。

オミクロン株による第6波は、重症化する人が少ないまま終息していく可能性もある。では、このまま新型コロナの蔓延は終息するのか。それとも違った変異型が表れて第7波を引き起こすのか。その時に重症化率や死亡率が高くならないという保証はない。あるいは、新型コロナとは違う別の感染症が流行しないとも限らない。つまり、感染症はいつも同じ顔をして我々を襲ってくるわけではないのだ。そのためには最悪の事態を想定した対策を練っておく必要がある。

ところが、ここでも岸田内閣は責任回避に動いている。

顕微鏡ウイルス細胞
写真=iStock.com/libre de droit
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緊急時に向けた体制づくりは「コロナ蔓延が終息してから」

現在の日本の法律では、医療の最終責任は都道府県にある。パンデミックが生じた危機の時には、医者、看護師、病床を融通し合うための司令塔機能を国が持つ重要性がかねて指摘されているが、岸田内閣は2022年6月までに法案をまとめるとして、先送りしている。同じ予算委員会で長妻氏の質問に答えた岸田首相は、「今の法律の中でできることをしっかり用意すること」が重要だとしたうえで、「具体的な対応の中で、検証した上で法律を作っていく」と述べるにとどめた。6月まで議論を先送りするのは、7月の参議院議員選挙を控えて、病床の増減などを実質的にコントロールしている医師会などに遠慮しているのではないかという見方もある。

実は、自民党自身、危機時に国が司令塔機能を持つべきだという提言を2020年の夏に行っている。ところが、菅義偉首相も、岸田首相も「この新型コロナ蔓延が終息してから」と先送りに徹してきた。今のところ今年6月をメドと言っているものの、参議院選挙を控えて会期の延長は難しい今国会で法律が成立するところまで行く可能性は低い。そうなると、早くても秋の臨時国会、遅ければ2023年の通常国会ということになりかねない。

現状の「平時」の法体系だけでなく、緊急時に国が強い権限を持てるように法改正して備えておこうという発想にもかかわらず、それが先送りされているのだ。それまでに、万が一、今以上の危機的な事態が起きた場合、後手後手の対応に終始せざるを得なくなる可能性が高くなるわけだ。そうなった時に、またしても政府は「想定外」だったと言い訳をすることになるのだろうか。

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