フリマアプリ大手のメルカリは、昨年9月、時価総額が初の1兆円に達した。直近まで5期連続で赤字だったが、なぜそこまで株式市場で高く評価されているのか。コンサルタントの村上茂久さんが、架空の対談形式で解説する――。(前編/全2回)

※本稿は、村上茂久『決算書ナゾトキトレーニング 7つのストーリーで学ぶファイナンス入門』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

東証マザーズに上場し、セレモニーで記念撮影するメルカリの小泉文明社長(前列右から3人目)、山田進太郎会長(同5人目)ら=2018年6月19日、東京都中央区
写真=時事通信フォト
東証マザーズに上場し、セレモニーで記念撮影するメルカリの小泉文明社長(前列右から3人目)、山田進太郎会長(同5人目)ら=2018年6月19日、東京都中央区

ベンチャーの決算書は「利益」だけ見ても意味がない

【中村】宮田さん、ご無沙汰してます!

【宮田】おつかれさま。中村さん、転職を考えてるんですって?

【中村】ハイ! ちょっと思うところがあって……。

【宮田】今の職場がブラックという感じでしょうか。

【中村】そういうわけじゃないんですけど、なんていうか、今の仕事、やりがいが感じられなくて。宮田さんも知ってる山野っているじゃないですか。あいつ、ベンチャーに行ったんですけど、すっごい楽しそうに仕事してて。この前もtwitterに『10億円調達達成』とか書いてて。なんか、充実してそうだなと思ったら、僕はこのままでいいのかなって……。

【宮田】うんうん、その気持ちわかります。私もそうでした。

【中村】ハイ。僕もベンチャーへの転職活動を考えてみて、とりあえず知ってる企業の決算書から調べ始めたんです。それで、個人間プラットフォームでCtoCのビジネスをしているメルカリの業績を調べたら、228億円の赤字って出てきたんですよ(図表1)。上場もして、めっちゃ儲かってますって顔して、実は火の車っていう。業種にもよると思うんですけど、ベンチャーの実態ってそうなんですか?

僕も簿記はそれなりに勉強したんですけど、こういうのに詳しいのって、やっぱりスタートアップ企業のCFOとしてバリバリ働いてる宮田さんだと思って……。

【宮田】話はわかりました。ちなみに、中村さんはメルカリの決算書のどこを見たんですか?

【中村】え? どこって……、そりゃあ、利益ですよね。利益を出しているかが一番大事ですよ。その次は売上高かな。どれだけ売り上げているかも大切ですね。あとは、株価ですね。最近株価が上がっているかどうか見ました。

【宮田】確かに、フツーそうですね。でも、実は、全然見るべきポイントが違うんです。