会計は「過去」、ファイナンスは「未来」

【中村】え!? でも、そういった感じで株式投資をしている人とかもいるじゃないですか!

【宮田】その通りなんですけど、それで「メルカリ」の業績をまったく分析できていませんよね? 通常の上場企業を分析するには中村さんの見方で通じるケースもありますが、成長著しいメガベンチャーやスタートアップ企業を分析する際にはそれだけだと残念ながら足りないのです。

【中村】もっと会計の知識が必要ってことですか?

【宮田】いや、そうではなくてですね。メガベンチャーやスタートアップ企業、ひいてはメルカリの決算書を読み解くには、ファイナンスとビジネスモデルの理解も必要なんです。

【中村】ファイナンスとビジネスモデル……。ビジネスモデルはまだしも、なんでファイナンス?

【宮田】ざっくり言うと、会計は「過去」、ファイナンスは「未来」を見る指標です。成長が著しい企業では、実績だけではなく将来性を重視する必要があるんですね。

【中村】未来ですか……。

【宮田】そう! そしてファイナンスを通じて未来を考えるにあたって、重要なことは利益ではないんです。それよりも、将来キャッシュフローを生むかどうかが重要なんです!

【中村】そもそも、キャッシュフローが何なのか、実はよくわからないんですけど。

【宮田】OK。まずはそこから説明しましょうか。

計算機
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どうなると企業は「倒産」するか

【宮田】さて、さっき中村さんが言ってたように、メルカリは2020年6月期までは赤字ですよね?

【中村】そうなんですよ。成長してる印象だったのに。このままいけば倒産するんじゃ?

【宮田】では、企業ってどうなったら倒産するかわかりますか?

【中村】ん? そりゃあ、赤字が続いたらいつかは倒産しますよね。あとは、いわゆる債務超過ですかね。バランスシートは「資産」と、「負債+純資産」でバランスしていますから、資産よりも負債の方が多くなれば、純資産がマイナスになって倒産してしまいますね(図表2)。

【宮田】よく勉強していますね! でも、惜しい。残念ながらどちらも違います。赤字が続いても、必ず倒産するとは限らないし、債務超過だからといって倒産するわけでもありません。

【中村】え? なんでそうなるんですか??

【宮田】倒産の可能性は高まっても、赤字や債務超過がそのまま倒産につながるわけではないからです。メルカリは5期連続赤字でしたが、ハッキリ言って倒産することは当面ありません。債務超過という意味なら、スターバックスも債務超過ですよ。

【中村】そういえば、スタバが債務超過ってニュースで見ました(※)。当時は「ふーん」って感じだったけど、確かに債務超過なのになんで倒産しないんだろう?

(※)米企業、株主還元で債務超過。スタバなど24社計7兆円

【宮田】そこで大切なのが、ファイナンスの視点です。