会社の値段を比較するには「時価総額」を使う

【宮田】その質問に答える前に、中村さんは今、メルカリと楽天の株価をそのまま比較しましたね? 実はそれ、最もやってはいけないことの一つです。株価を単純に比較して、「メルカリの株価の方が高いから、良い企業」というのはご法度です。

【中村】なんでですか? ニュースでもネットでも言ってるし、比べやすいじゃないですか。

【宮田】株価は正確な会社の値段ではないからです。きちんと比較するためには、さっき言った時価総額を使わなければなりません。

時価総額=株価×発行済株式数

で計算されますが、発行済株式数は株式分割(※)によって増やせます。ただし、株式分割をすると発行済株式数は増えますが、株価は下がります。株価×発行済株式数の積は一定だからです。1枚のピザを4枚に切っても8枚に切っても、ピザ全体の大きさは変わらないですよね? それと一緒です。

(※)株式分割とは、資本金を変えずに、発行している株式を分割すること。たとえば100株を発行している会社があるとして、1株を10株に株式分割すると、株式は1000株になる。ただし、資本金はそのまま。

【中村】ということはピザを時価総額にたとえると、1枚あたりのピザの大きさが株価で、ピザを切った枚数が発行済株式数ということですね。

【宮田】その通りです。以前ライブドアという会社で、株式分割をする度に理論値よりも株価が上がり、時価総額が増えていった錬金術のような事件もありました(※)。しかし、今は法律も整備されて、理論上は株式分割をしても時価総額は大きく変わらないはずです。

(※)当時、株式分割をしても、実際に分割された新株が発行されるまでは、ある程度の日数がかかった。その間、市場で流通する株式が品薄になることで、株式分割を通じて株価を上昇させることが可能だった。

【宮田】といっても、株式分割をして株価が下がったことで、株に投資をしやすくなり、株式への需要が増えて、時価総額が増えることもあり得ます。だから厳密には、時価総額にまったく影響がないとは言い切れないんですけどね。

ヤフーファイナンスや日経新聞のネット版で確認できる

【中村】で、時価総額ってどこに載っているんでしたっけ?

【宮田】実は、企業の決算短信や有価証券報告書に時価総額は出てきません。時価総額は、株価の情報が載っているような――たとえば、ヤフーファイナンスや日経新聞のネット版に掲載されているから、それを確認しましょう。もちろん、有価証券報告書から発行済株式数を探してきて、その値に直近の株価を掛け算して計算しても大丈夫です。

【中村】ええと、メルカリの時価総額を調べると……、株価は6160円で、発行済株式数は1.57億株。約9827億円(2021年9月30日時点、直近のメルカリの時価総額は8000億円弱)。スゴ! 確か、ユニコーン(※)の時価総額は1000億円以上でしたよね。メルカリはすでにそのステージを大きく超えていますね。関連で楽天の時価総額は……1.7兆円。株価はメルカリよりも低いものの、時価総額はさすがに楽天の方が上ですね。

(※)ユニコーンとは、評価額が10億ドル以上の未上場企業のこと。ユニコーン企業の条件として、創業10年以内としている場合もある。