赤字でもキャッシュさえ回れば企業は倒産しない

【中村】先程お話されていた「キャッシュフロー」ですか?

【宮田】そう。「将来生み出すと予想されるキャッシュフロー」が大事です。ファイナンス的視点では、ここさえしっかりしていれば、赤字だろうが債務超過だろうが企業は評価されます。

【宮田】これは、利益ではなくキャッシュ、つまり企業が生み出す現金に注目するということなんです。さっきの企業が倒産する時についての答えはこれです。企業はキャッシュがなくなると倒産するんです。別の見方をすれば、赤字でも、債務超過でも、キャッシュさえ回れば企業は生き続けます。視点を変えると、会社は黒字でも倒産します。黒字倒産って知ってますか?

【中村】たまにテレビやニュースで聞きますが、あんまりわかっていないですね……。

【宮田】企業は利益が出ていても、キャッシュがなくなると倒産します。いくら儲かっていようと、取引先への支払い、従業員の給料、税金、そして借入金の支払い期限等が来ても、支払いができないと事実上倒産になるのです。

たとえば、コンサルティング業務をしているとして、毎月売上を計上しても、入金があるのは1年後だった場合、その間にキャッシュがつきてしまうと倒産するというのが、黒字倒産です。

【中村】だから中小企業は資金繰りを常に意識しているんですね。そんなこと、全然意識してませんでした。

なぜメルカリの株価は楽天の6倍近くあるのか

【宮田】そうですよね。特に大企業で働いている人はこの視点を持ちにくい。なぜならば、自社の成長において大事なのは、売上高や利益だからです。

でも、スタートアップ企業や中小企業は違います。キャッシュがなくなると、会社の事業を回せなくなる。従業員の給料、取引先や税金の支払い。これらでキャッシュを使うので、スタートアップ企業や中小企業の経営者は毎月資金繰りに冷や冷やしながら会社の通帳やネットバンキングで現預金残高を確認しているんですよ。

【中村】てことは、メルカリについても現預金残高を見ればいいってことですね!

【宮田】そうですね。色々ありますが、今日はメルカリについて理解を深めるため、ファイナンスとビジネスモデルに関して、「時価総額」と「キャッシュフロー計算書」から分析しましょう。

ところで、メルカリ以外の企業とか調べてみました?

【中村】はい、他の企業の株価を比較してみました。メルカリの株価は今6160円(2021年9月30日時点)なんですけど、メルカリの競合だったフリルを買収した楽天グループ(以下、楽天)の株価は1081円(2021年9月30日時点)で、楽天よりもメルカリの方が株価は上なんですよ! 株価が6倍近くあるってすごくないですか? でも、なんでメルカリの方がこんなに株価が高いんですかね?