※本稿は、掛布雅之『阪神・四番の条件』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
エラーが多いままでは優勝は難しい
2021年シーズン、阪神はヤクルトに13勝8敗4引き分け、巨人に13勝9敗3引き分け。ホームゲームでは36勝31敗4引き分けと、貯金は5つしかできなかった。
また、球団エラー数は86で、4年連続でリーグ最多エラーを数えている。リーグで唯一、甲子園の土のグラウンドで戦うとはいえ、エラーで無駄な走者を出して無駄な失点を献上する。あれだけ強力なリリーフ陣を抱えながら引き分けに持ち込めず、その前に負けてしまう。引き分けがリーグ最少というのは、エラーに原因があるのではないかと思っている。
優勝の可能性を残した10月26日の最終143試合目。エラーで先取点を許して敗れたのは、阪神の2021年シーズンを象徴していた。
逆に、球団エラー数のリーグ最少は巨人の45。阪神の約半分だ。「野球は守り」とよく言われるが、エラーは投手の球数を増やすことに始まり、悪循環を招く。エラーが多いまま他チームの頭ひとつ上にいくというのは、やはり非常に困難だ。
直近の5年間、阪神でゴールデングラブ賞を獲得したのは、2017年の鳥谷敬と18~20年の梅野隆太郎しかいない。
1985年の阪神は「守り勝ったチーム」だった
思えば1985年の優勝は、真弓明信・バース・掛布・岡田彰布と30発カルテットを擁して「打ち勝った野球」の印象は強いが、木戸克彦捕手、岡田二塁手、平田勝男遊撃手、僕が三塁でゴールデングラブ賞を受賞していた。バースの一塁もうまかった。
僕は優勝の共同会見でこう言った。
「マスコミのみなさんは『200発打線』のひとことで片付けがちですが、このチームは守り勝ったチームなんです」
1-0だろうが、10-9だろうが、1点差を守る力がなければ優勝はできない。
日本シリーズは阪神・吉田義男監督、西武・広岡達朗監督の「遊撃手対決」だったが、あの守備に辛口の広岡さんをして「日本シリーズの大きな誤算は、阪神は打つチームであり守れないのだと私が思い違いをしていたことだ」と言わしめた。
2021年のオリックス優勝により、阪神は12球団でDeNA(1998年)に次いで優勝から遠ざかるチームとなってしまった。2022年以降、阪神が優勝を狙うには、とにもかくにも守備力改善が最大の課題である。