新生銀行はSBIホールディングスによるTOBへの買収防衛策を取り下げた。今後は、SBIホールディングスの傘下になると見られる。金融アナリストの高橋克英さんは「新生銀行が抱えている3490億円もの公的資金返済について、SBIは具体的な返済計画を持っていない。これから待ち受けているのは茨の道だ」という――。
決算会見で、新生銀行へのTOBについて話すSBIホールディングスの北尾吉孝社長=2021年10月28日、東京都港区
写真=時事通信フォト
決算会見で、新生銀行へのTOBについて話すSBIホールディングスの北尾吉孝社長=2021年10月28日、東京都港区

土壇場での買収防衛策取り下げ

SBIホールディングスが、新生銀行に対して敵対的なTOB(株式公開買付け)を実施していた件で、2021年11月24日、新生銀行が土壇場でSBIに対抗する買収防衛策を取り下げ、翌日の臨時株主総会も中止すると発表した。SBIに加え、公的資金注入に伴い20%以上を保有する大株主の国(預金保険機構と整理回収機構)が、買収防衛策に反対に回ると報じられ、過半数獲得が事実上困難となったことで、万策尽きた新生銀行は、買収防衛策を取り下げるに至ったとみられる。

もともと、SBIの北尾吉孝社長は「新生銀行に対するTOBで99.9%勝つと思っている」と語っており(日本経済新聞2021年11月12日)、SBIはこのまま12月10日が期限のTOBを続け、最大48%の株式を取得することで、新生銀行を事実上傘下に置くことになる。北尾社長のメディアへの積極的な登壇に加え、金融庁や財務省などの大物天下りOBの存在、さらには米大手投資銀行や大手弁護士事務所も加わったSBIの陣容を前に、SBIが圧倒的に有利との下馬評通りの結果となった。

TOB成立後も茨の道は続く

もっとも、この先は、SBIにとっても、茨の道だ。新生銀行の株主には、生保など国内外の機関投資家に加え、Bloombergの報道によると、旧村上ファンド系投資会社「シティインデックスイレブンス」や香港の投資ファンド「オアシス・マネジメント」や米国の「ダルトン・インベストメント」など、いわゆる「物言う株主」といわれるアクティビスト・ファンドも相当数の株式を保有している。こうしたアクティビストが、TOBに応じなかったり、株価引き上げなどさまざまな要求をしてきたりする可能性がある。

TOBは成立するものの48%の保有に達しなければ、連結子会社化できず、SBI主導による新生銀行の経営が不安定化する事態も考えられる。

SBIによる今回のTOBにおいては、これらアクティビストや、世界最大の議決権行使助言会社であるグラスルイスやインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)も指摘するように、

(1)少数株主への不利益
(2)SBIのガバナンス、執行能力への懸念
(3)SBIにも明確な公的資金返済プランがない

といった懸念があり、SBIはこうした点を払拭する必要もある。