冒頭でも述べたように、役員報酬の算定基準を開示する動きが広がっているが、その背景には、株主や投資家への情報の透明化という狙いがある。
一般社員の給料は雇用者(経営者)がその額を決める。労働組合があるのは、雇用者が権利を乱用することがないよう、雇用者と被雇用者両者の力を均衡させるためである。
これに対し、役員報酬は金額を決める人(役員)と受け取る人(役員)が一致している。報酬額を業績に連動させる方式がとられていたとしても、どう連動させるか、その詳細は会社によって異なるはずだ。
日本では役員の報酬の総額や上限を定款や株主総会で定め、取締役会が金額の配分を決めるのが一般的である。上場企業の場合、報酬が一億円以上なら受け取った役員の氏名や金額が有価証券報告書で明らかにされるものの、算定基準を開示することは義務付けられていない。
自身で報酬額が決められる性質のものだけにお手盛りで金額が決まることもありうるわけだが、これを透明化すれば、金額の妥当性を株主や投資家がチェックできる。一般社員が給与や賞与の額について交渉する組合をもつことで雇用者との力の均衡を図るように、役員報酬の算定方法を開示することは、株主と役員の力を均衡させる意味合いがある、とも考えられる。
ちなみに、役員の退職慰労金は支払った年度の「特別損失」に計上される。会社によっては毎月、引当金を計上しているケースもあり、その場合は毎年、一般管理費として計上する。ただし税制上、引当金は経費として認められないため、決算書を作成後、税法上の調整を行ったうえで確定申告する。
また退職慰労金の額によっては、税制上、全額は経費として認められないケースがある。その場合は確定申告の際に額を減らして申告することになる。ちなみに退職慰労金も所得税の対象だが、社員として受け取る退職金と同様、退職所得控除が適用され、税額が軽減される。