2度の告白を経て付き合うことになった二人

二人が出会ったのは南インド、タミル・ナードゥ州のポッラチという町にある技術系カレッジ(日本の大学の学部に相当)。カウサリヤは高校を終えて入学したばかり。シャンカールは三年生だった。

シャンカールは気概があって、どんなことにも熱心に向かっていく青年だった。ある日、シャンカールがカウサリヤに「誰か好きな人はいるの」と聞いてきたので、いないと答えた。すると「僕は君のことをすごく好きなんだ」と言う。カウサリヤはちょっと驚いて「友達でいることはできるけど。でも恋愛関係になることは期待しないで」と答えた。シャンカールは静かに「ソーリー」と言って立ち去った。

カウサリヤはシャンカールの申し出を断ったけれど、彼が少しも怒った素振りを見せなかったことには好感を持った。

カウサリヤはシャンカールが母親をすでに亡くしていること、家族は父親と弟二人だということを知った。シャンカールには独特のクセがあった。女友達と話をする時には、十分すぎるほど離れて喋るのだ。それは女性の尊厳を尊重してくれる行為のようにカウサリヤには思えた。

数日後、シャンカールがやってきて、先日彼女の気持ちを害してしまったことを謝った。「でも僕は君のことをやはりとても好きだよ」と言う。カウサリヤは、今度は断る理由はないなと思った。恋愛以上に、カウサリヤにはシャンカールに対する尊敬の気持ちが芽生えていた。

「シャンカールは、尊厳とリスペクトを持って振る舞うことが愛情なんだって教えてくれたの」

しばらく友人関係を続けた後、カウサリヤはシャンカールと付き合い始めた。

手をつないでいる人
写真=iStock.com/Rawpixel
※写真はイメージです

シャンカールのカーストを気にする母親

付き合っている間、彼らは境界を越えてしまわないよう十分注意していた。二人だけで直接会話することは最小限にとどめ、電話や携帯のメッセージを通じて会話することの方が多かった。

——カウサリヤは語る。

「ある時、授業が終わるのが遅くなってしまって、たぶん午後7時半頃だったと思う。シャンカールは私のことを待っていてくれて、二人でバスでポッラチから私の住むパラニの町(どちらもタミル・ナードゥ州中西部の中規模の町)まで一緒に帰った。その時に誰かが私たちに気づいて、私の母に私が若い男とバスの中で喋っていたと告げ口したの。

数日後、母は私にシャンカールのことを聞いてきた。彼女の最初の質問はなんだったと思う? 『シャンカールのカーストは何?』よ。私は、シャンカールはパッラル・カーストだと言った。そしたら、『どうしてそんな子と話をすることができるの? もし私たちのカーストの人たちがこのことを知ったら、彼らは私たち家族のことを悪く言うに違いない』と言ったわ。」

パッラル・カーストとは、旧不可触民とされるカーストだ。現在はダリトと自称することが多い。