全都道府県での引き下げは2009年以来12年ぶり

都道府県の職員給与に関する47都道府県の人事委員会勧告が10月25日に出そろった。ボーナスは全都道府県で引き下げとなる一方、月給は据え置きとなった。勧告通り実施された場合、平均年収は全都道府県で減少する。全都道府県のボーナスが引き下げ勧告となるのは、リーマン・ショックの影響で景気が悪化した2009年以来12年ぶり、という。

東京都庁(中央)=2021年7月31日、東京都内[時事通信ヘリより]
写真=時事通信フォト
東京都庁(中央)=2021年7月31日、東京都内[時事通信ヘリより]

地方公務員の給与・賞与は、「民間企業並み」を前提に、民間の給与水準を調査して増減が決められる。毎年夏に国家公務員の給与・賞与について人事院が示す「人事院勧告」に追随のうえ、各都道府県の実情などを加味して委員会が勧告する。今年は、新型コロナウイルス感染症の蔓延で、民間企業の業績が悪化し、賞与が抑えられていることから、8月に人事院がボーナスの0.15カ月分引き下げと月給の据え置きを勧告していた。

時事通信が調査した結果の報道によると、ボーナスの下げ幅は37道府県が国並みの0.15カ月、7都県が0.1カ月。青森・鳥取・高知の3県が0.05カ月だった。最もこれは月数で、都道府県によって財政状況に大きな違いがあるため、支給金額の減少幅はまちまち。それでも、「新型コロナで仕事が忙しくなっているのに年収が下がるのはモチベーションが下がる」といった憤懣ふんまんが職員の間で広がっているという。

「民間企業の水準調査」は大企業が対象

もちろん、その気持ちは分かるが、新型コロナで塗炭の苦しみを味わっている民間企業に比べれば、「天国」であることは間違いない。何せ、失業のリスクがないのだ。飲食業や宿泊業、小売店などは営業自粛要請に伴って休業補償などが出ているとはいえ、減収分を賄えるわけではない。そのしわ寄せは弱い立場の従業員に向いており、雇い止めやシフトの削減などの憂き目に遭っている。雇用調整助成金が出ているところはまだしも、雇用の不安に怯えている民間企業従業員は少なくない。ましてボーナスとなれば、出るだけありがたい、というところだろう。

人事院が行う民間企業の水準調査も大企業を対象にしており、人事院が使う「民間」の指標が、「民間」の実情からかけ離れているという指摘も繰り返されてきた。しかも本来は、失業リスクがゼロである分、給与は低くてもおかしくないのだが、そうしたリスクの有無は考慮されていない。都道府県の場合もそうで、多くの地域で、最も安定して好待遇の職場は「県庁」と相場が決まっている。